トヨタの現役幹部による最新刊『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結』から、読みどころを抜粋してお届けしています。今回は、「カイゼン」「QCサークル」「トヨタ生産方式」といったトヨタ発のキーワードの中で、「自工程完結」はどのような位置づけになるのか、簡単に紹介します。
前々回、前回で日本のオフィスでの仕事の進め方に関する問題がどこにあるのかを私なりに紹介してきました。残念ながら、トヨタにおいても、こういった仕事がたくさんあると思っています。私は技術屋で生産性を常に追求してきた人間でした。現場を知っている人間には、とりわけスタッフ部門の仕事には歯がゆさがありました。
しかし、そもそもこんなことをやっていたのでは、もはや海外との競争では勝てない、ということに気づかなければいけません。生産性を高め、素早く意思決定しないといけない。
そこで「心がけ」を「心がけ」で終わらせることなく、科学的にやることを考えたのが、「自工程完結」という新しい取り組みだったのです。
「自工程完結」とは、良い仕事しかできない、良いものしか作れないという条件は何なのか、ということを徹底的に、科学的に実現しようとする考え方です。
この考え方のもとで仕事を突き詰めていくと、今まではあきらめていた生産性の向上が、これまで以上に図れるのではないかと考えました。
トヨタには、世界に知られるさまざまな用語があります。「カイゼン」もそうですし、「QCサークル」もそう。「トヨタ生産方式」もそうです。では、新しい取り組みの「自工程完結」はその中で、どんな位置づけになるのか。
端的に言えば、トヨタの品質と生産性をカバーしているのは、「トヨタ生産方式」です。「カイゼン」はその中で行われるエンドレスの活動です。そして「QCサークル」は、「カイゼン」を促進する活動と言っていいと思います。
「自工程完結」は、良い仕事をするためには、どうすればいいのか、を科学的に洗い出す、という考え方です。部分ではなく、全体を見ます。
その意味では、「カイゼン」との両輪をなすもの、と言えると思います。「自工程完結」という笠をかぶせたうえで、「カイゼン」を行っていくと、「カイゼン」は後戻りせず、定着していくのです。
まだ、概念的で少しわかりにくいかもしれません。本書では、実際のトヨタのオフィスでの事例や私の経験をベースに、なぜこの新しい取り組みが生まれたか、というところから、詳しく説明しています。