内定式の意味と
トランジション
この「移行」を意識させるうえでは、「内定式」も、有効に使えるかもしれません。
私のいる株式会社ぐるなびでは、これまで内定式というものはやっていませんでした。どこにもないオリジナルのビジネスモデルを打ち立てた企業の自負として、横並びの普通の企画はやりたくないという思いもあり、毎年あえて10月1日をはずした前後の日に内定者を集めてはいたのですが、そこでも内定式という行事はやりませんでした。
でも、今年は担当者の思いもあって、これをやってみることにしました。
内定式の意義というのは、来年の4月からこの会社で社会人として頑張ろうという思いを内定者にあらためて固めてもらうことでしょうか。そのためには、次の3つの要素がポイントになるように思います。
(1)入社しようとしている企業について、あらためて深く知る。
(2)入社しようとしている企業で働いている人、これから一緒に入る同期の仲間について、あらためて深く知る。
(3)学生から社会への「移行」が大切であることをきちんと理解する。
最初に長々と書いてきたことは、(3)につながることです。
ぐるなびの
芋煮会内定式
当社の今年の内定式は、2日間に渡りデザインされていました。
初日である10月1日の午後は、あえてトラディショナルな内定式を実施しました。内定通知書の交付といったセレモニーすらあります。
その理由の一つには、(3)――「移行」を意識させるということもありました。何かが変わることを伝えるわけです。
その晩には、面接官をつとめてくれた各部署の先輩方を交えたフランクな懇親会です(これは(1)と(2)が主な目的になります)。
そしてメインイベントは、2日目の朝から行った「芋煮会」。
芋煮会とは河川敷などでさまざまなグループで行われる東北地方に特有の季節行事で、東北では花見に匹敵するポピュラーさを誇り、最近では地域おこしのイベントに活用されたりもしています。
ちなみに、「全日本芋煮会同好会」という会があるのですが、そこでは「持ち寄る」「一緒につくる」「シェアする」の3つをコンセプトとしています。この要素は、組織で働くマインドにもそのままつながるものです。先輩社員にサポーターとして多数協力してもらい、内定者同士で異なるチームをつくります。
食材の調達こそ会社側が行うものの、あとは各チームの自主運営ですべてを行います。
チームビルディング、タスク管理、緊急対応、タイムマネジメント、意思決定、報告連絡相談など、企業に入って必要となる要素が、ここで疑似体験できます。