ザッカーバーグ氏が保有するフェイスブック株のうち、1000ドルをこのLLCから慈善活動に寄付するとします。この株が最初は100ドルで入手したとすると、株価上昇による利益が900ドルなので、仮に金融課税の税率を20%とすると、180ドルが税金に消えます。寄付される側は820ドルを受け取り、寄付の総額が年間所得の50%以下までは課税所得から控除されるので、ザッカーバーグ氏も820ドルの控除を受けることができます。

 これだけでもそれなりの節税効果と言えますが、実はもっと賢い方法があります。それは、1000ドルの株式をそのまま慈善活動に寄付することです。その場合、米国の税法上、寄付を受けたところは株式をそのまま売れば税金を納める必要がなく、1000ドルがそっくりそのまま手元に残ります。そして、寄付したザッカーバーグ氏も、株価上昇による利益にかかる税金を払わなくて良いので、1000ドルの控除を受けることができるのです。

 即ち、この方法を使えば、寄付する側もされる側もwin-winの結果を勝ち取ることができ、ザッカーバーグ氏は最大限の節税効果を享受できるのです。

節税による寄付をもたらす税制の歪み

 それでは、ザッカーバーグ氏の今回の行動は慈善よりも節税が目的だと非難されるべきでしょうか。私はそうは思いません。ザッカーバーグ氏は税制や法律が定める範囲の中で、社会貢献と節税の双方の最大化を目指したに過ぎないからです。

 それよりも問題視すべきは、仮に社会貢献が目的とはいえ、これだけ巨額の資金の使途を一個人が決めるのが社会システムとして望ましいかどうかということではないでしょうか。

 通常は、富裕層から税金を徴収して、政治家や官僚が予算によりその使途を決めるという形で、富裕層の資金が社会に還元されます。ザッカーバーグ氏は、その使途を政治家や官僚ではなく自分が決めると意思表明したに等しいと思いますが、政治家・官僚とザッカーバーグ氏のどちらがより賢明な決定をできるのでしょうか。

 もちろん政治家や官僚の方が優れていると言う気はありませんが、それでも民主的なプロセスを経た方が良いのではないかと思います。例えば、米国の疾病予防管理センター(CDC)の予算は70億ドル(約8500億円)だそうです。としたら、政治家や官僚よりも一部の富裕層が社会貢献の使途を自分で決める仕組みの下では、例えばザッカーバーグ氏が疾病対策に関心を持てば予算は簡単に倍増できるけど、そうじゃなかったらいくら社会的に重要なミッションを持っていても、予算は増えないかもしれないからです。