コンシャス・カンパニー(意識の高い企業)
の経営に見られる4つの特徴とは?

世界的に成功している企業には、利益よりも人の幸せを重視する経営を実践しているところが多い。今、日本企業に求められているのは、「コンシャス・カンパニー」(意識の高い会社)になることだ

 今、企業に求められているのは、「コンシャス・カンパニー」(意識の高い会社)になることです。私は米国のバブソン大学でマーケティングを教える教授ですが、そうした優秀な企業を研究しており、2012年にその集大成として『世界でいちばん大切にしたい会社 コンシャス・カンパニー』(日本版発刊は2014年)という著書を上梓しました。

 今回は、この著書に私が込めた理念を基に、コンシャス・カンパニーとは何かについて、日本の経営者の方々にお伝えしたいと思います。コンシャス・カンパニーとは、言い換えれば「人を幸せにする経営」を行う企業。イケア、スターバックス、パタゴニア、コストコ、サウスウェスト航空、タタ、ポスコといった、世界で超優良と言われる企業の多くは、そうした経営を行っていることがわかっています。

 米国の一般的な企業は巨大な費用をマーケティングに投入しますが、カスタマーロイヤリティや企業に対する信頼は、それに相反して低下傾向にあるのが現状です。一方、コンシャス・カンパニーは、マーケティングの予算をそれほどかけなくても、顧客、投資家、サプライヤーといった全てのステークホルダーから大きな信頼を勝ち得て、大成功を収めています。

 そうした企業を深堀りしてわかった共通の特徴が、主に4つあります。

 第一に、社員、投資家、取引先、顧客など全ての利害関係者の「幸せ」を考えながら、ビジネスを行なっていること。こうした企業は、身内や周囲のコミュニティから大事にされています。

 第二に、単純に利益を上げるために存在している企業ではないということ。自社の存在目的を明確に持っており、自社を取り巻く社会をより良くしようという情熱を持っています。

ラジェンドラ・シソーディア(Rajendra Sisodia)
コンシャス・キャピタリズム・インク(Conscious Capitalism Inc.)共同創業者及び共同理事。米ベントレィ大学などを経て、現在米バブソン大学 FW Olin名誉教授。研究分野はグローバルビジネスとホールフーズ・マーケットのコンシャス・キャピタリズム

 たとえば、米国の大手食料品スーパーマーケット、ホールフーズ・マーケットは、人々をより健康にしようという使命感を持っているし、アウトドアグッズチェーンのパタゴニアには、自然と人々が共存してより楽しい生活を送る一助になろうという信念がある。グーグルは、様々な世界に散らばった情報を人々の暮らしに役立つように整理・工夫して届けようというミッションを意識しています。これらは皆、世間から評価されているポリシーです。

 第三に、リーダーが一般的な企業の経営者と少し違っているということ。人を大切にすることを第一に考え、それを基本理念とした企業の存在目的をはっきり示している。こうした人たちは、権力、お金、社員の管理などがあまり頭にないリーダー、いわばコンシャス・リーダー(意識の高い経営者)です。

 そして第四に、企業カルチャーが一般的な会社と違うということ。社内は信頼感に溢れており、楽しい雰囲気があって、社員をはじめとするステークホルダーを思いやる文化が根付いています。