仕事と直接関係ないジャンルの本はどう読めばいいのか?「非ビジネス系」の本から得た学び、力、信念を、本業につなげるには?新刊『戦略読書』から一部を抜粋して紹介する連載第5回は、「読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)」のセグメント3「非ビジネス基礎」の効果的な読み方。大のSF好きの三谷氏が、仕事と一見関係ないSF小説を読み続ける理由とは?

「非ビジネス基礎」(SF・科学・歴史・プロフェッショナル)
未来につながると信じ、斜め読みでただ楽しむ

 これまで、「読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)」(詳しくは第2回参照)の「ビジネス基礎」「ビジネス応用」の読み方を紹介しましたが、今回は右下のセグメント3「非ビジネス基礎」の効果的な読み方について解説します。

〔出所:『戦略読書』三谷宏治〕

 アップル創業者で前CEOのスティーブ・ジョブズは、生前、若者たちを前に(*1)こう言いました。

「今、興味あるものに打ち込め。それはきっと将来、役に立つから。そういった経験や知識やスキルの『点』が、いつかつながって『線』になるから」。

 ジョブズはこれを「Connecting the dots」と表現しました。ジョブズは、せっかく入ったリード大学をたった6ヵ月で中退してしまいます。あまりの大学の必修科目のつまらなさに、そしてそこに裕福ではなかった両親の蓄財を注いでしまっていることに、耐えられなくなったのです。しかし、辞めてみたら、世界が変わりました。もう義務的に出なくてはならない授業などありません。好きなものだけつまみ食いです。

 結局彼は、カン拾いなどもしながら1年半、大学構内に住み着き、勝手にさまざまな授業にもぐりで出席していました。その1つがリード大学の誇る、カリグラフィ(文字装飾)の講義でした。ジョブズは、講義内容がただ好きで、受け続けました。

 それは8年後に花開きます。アップルでの新型PCマッキントッシュ開発時に、彼のカリグラフィの知識が生きたのです。彼が(無理やり)開発責任者となったマッキントッシュには、彼の強力な指揮により、見た目に美しく、かつ、拡大縮小しても形が崩れない、複数のプロポーショナルフォント(*2)が実装されました。

 他の面も含めて画期的な「パーソナルコンピュータ」となったマッキントッシュは、デザインを愛する大人たちに愛され、DTPという新領域を切り拓きもしました。点と点は、見事つながったのです。

 自分の興味ある本を、斜め読みで良いので通読しましょう。いや、全部読み通せなくても大丈夫です。そこでの学びが、きっといつか、互いにつながります。本業のために、その趣味が役に立ちます。

*1 スタンフォード大学、2005年6月の卒業式での式辞。
*2 フォント名は、Chicago、Geneva、New York、Monaco、Venice、London、Athens など世界の主要都市名がつけられた。これもジョブズの指示によるもの。