「Connecting the dots!」の本当の意味。
つながるでなく、つなげる!

 いや、役に「立てる」のです。「非ビジネス系」本で得た学びや力、信念を、本業にどんどんつぎ込むのです。ジョブズの言う「Connecting the dots!」のconnectは、自動詞ではなく他動詞です。つながる、ではなく、つなげる。「点」は、つなげるものなのです。

 ここでお勧めしているSFだって、私自身、中学生の頃は「将来、なんの役にも立たないもの」と思っていました。まさに荒唐無稽の「世界」、いや「宇宙」だったのですから。
 私にとっての『スター・ウォーズ』である、E・E・スミス『銀河パトロール隊』シリーズもそうでした。

 銀河系の正義と秩序を守るレンズマンたちと、宇宙海賊ボスコーンの死闘が描かれます。あらゆる形態の宇宙人たちが登場し、レーザー銃あり、艦隊戦あり、白兵戦あり、拷問あり、恋愛ありの大冒険活劇です。

 これが一体、仕事にどう役立つのでしょう。まずは、クライアントの役員との雑談に役立ちました。入社1年目の秋に配属されたプロジェクトのクライアントはとてもスマートで、役員報告会のあとに必ず、出席した役員たちとの立食パーティが催されていました。人数的に先方の方が多かったので、枯れ木も山の賑わい、私も出席せざるを得ません。

 私と話すことになってしまった古参役員、あきらめ顔でこう言います。
「キミなんて、私の孫みたいなもんだよねえ」
 仰るとおりです。でも紳士な彼は、私に話を振ってくれます。
「キミはどんな本が好きなの?」
 普通のビジネス書の話では太刀打ちできないと直感した私は、とっさに一番得意なSFの話を始めます。
「やっぱりクラークの『幼年期の終り』ですけど、スミスの『銀河パトロール隊』も大好きでした……」
「ん、ボクもそれ読んだよ」「どのレンズマン(*3)が、いいと思う?」

『銀河パトロール隊(レンズマン・シリーズ)』E・E・スミス(創元SF文庫)2002年

 なんとその役員、目を輝かせて食いついてくるではありませんか! 彼はかなりのSF好きで、しばし「多様性の高い組織とレンズの意味」について雑談を楽しむことができました。

 以来、SFの力に自信を持った私は、SFから得た「本質的な問いや答え」といったものたちを、仕事にも積極的に使うようになりました。

*3 銀河パトロール隊の特別構成員。特殊なレンズ状の認識票を古代種族アリシア人から与えられ、テレパス(精神感応力)や特殊能力を発揮する。