「粗読み」「斜め読み」「熟読」「重読」「輪講」「朝読」……目的が変われば、読み方も変わる。本からの学びを最大化するためには、どのような戦略が有効なのか?新刊『戦略読書』では、「読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)」によって、読むべきジャンルを意図的に変える戦略を紹介しているが、4つのセグメントごとの効果的な読み方とは?『戦略読書』から一部を抜粋して紹介する連載の第3回は、セグメント1の「ビジネス基礎」の最も効果的な読み方を解説する。

読み方を変える、とは?

 私はもともと、どんな本でも雑誌でも「読み方」は常に同じでした。好きで本を読んでいたので、虚心坦懐、全力で読み続けるのみでした。そのうちヒトより読むのが速くなったこともあり、不便を感じたことはありませんでした。でも就職前のインターンシップのとき、それまでとはまったく違う「読書」を経験しました。

 そこでは大きなお題だけを与えられ、情報収集をするための予算が(何万円か)あり、時間は限られていました。仕方ないので大手書店や政府刊行物センターを何軒か、半日かけて回って関連書(とおぼしきもの)を30冊くらい買い込み、それを1日で読み込みました。もちろん、まともに読んでいたら間に合わないので、ものすごい飛ばし読みです。

 読書をドライブだとしてみましょう。周りの風景が本の中身です。そのドライブにはきっと目的(デートかヒマつぶしか)があり、それに合わせた車種(スポーツ車かSUVか)や運転の仕方(スピード重視かのんびり運転か)、BGMのかけ方、記録の取り方なんかがあるでしょう。

 そう考えると、そもそも私の読書には、目的がありませんでした。本の形態は紙しか選ばず、読書方法はただ無心の境地での通読(*1)、時間や場所は教室での授業中。本に線を引くこともなく(*2)、読み終わったらすぐ次!でした。インターンシップのときには、それが全部違いました。

【目的】限定的情報の収集
【形態】紙でもなんでも可(検索上は電子書籍が有利)
【読書方法】キーワードに注意しての飛ばし読み
【読む場所】オフィスの机
【記録方法】書き出すか頁ごとコピー

 目的以外の部分を「読み方」とすれば、目的が変われば、読み方はまるっきり変わるということです。それにしても、30冊を1日で「読んで」しまうなんて、なんと勿体ない……。学生にとっては、とても贅沢で衝撃的な「読み方」経験でした。

目的に応じて、読書方法を変える。粗読み、斜め読み、熟読、重読

『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』小宮一慶(ディスカヴァー携書)2008年

 小宮一慶『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』では、読書方法をその目的に応じて、5つに分けています。

(1) 速読:求める情報を探すために、要点を素早く把握する
(2) 通読レベル1:最初から最後まで、普通に読む
(3) 通読レベル2:最初から最後まで、論点を整理し考えながら読んでいく
(4) 熟読:注や参考文献を参照しながらきっちり理解するために読む
(5) 重読:生き方などに関する座右の書として、何度も繰り返し読む

 です。(1)速読は、普通の意味とは異なるので、ここでは「粗読み」とします。文字通り、粗く読むこと、です。また(3)までやって(4)に至らないのは勿体ないので、(3)は(4)に含めることにします。(2)は「斜め読み」と言い換えます。すると、次の4つに分けることになります。

(1) 粗読み:特定の情報を探すために、キーワード周辺だけ読む
(2) 斜め読み:全体の論旨を把握するために、全体をざっと通読する
(3) 熟読:内容をしっかり理解するために、注釈も含めて精読する
(4) 重読:座右の書として、何度も繰り返し読む

 そしてこれらは、組み合わされることも多いでしょう。(1)粗読み×(3)熟読、(2)斜め読み×(3)熟読×(4)重読、などです。ざっと読んで大切なところを見つけたら、その部分は、理解できるまでじっくり精読(=熟読)するのです。

 これらの読書方法を含めた「読み方」が、第2回で紹介した「読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)」のセグメントごとに大きく異なります。読書の目的が、違うからです。資源配分や本の選び方だけでなく、本の読み方も戦略的に、変えましょう。

*1 全体を一通り読むこと。初めから終わりまで読み通すこと。
*2 中学まではほとんどの本は図書館から借りたものだったので、線を引いたりする習慣がなかった。