経営 X 人事
なぜ職場で人が育たなくなったのか
【第10回】 2010年6月7日
著者・コラム紹介 バックナンバー
間杉俊彦 [ダイヤモンド社 人材開発編集部副部長]

若手をつぶす?“スパルタ式”新入社員研修
「厳しさ」と「理不尽さ」の曖昧な境界線

「いつまでに」「どういうレベルになってほしいか」
不明確なゴール設定

 テレビ・カメラは入っているものの、研修所は閉鎖的な空間です。研修メニューが理不尽だと思ったとしても、指導者(上司・先輩社員)と新人という上下関係ですから抗議することは事実上、不可能です。脱出することは即、退社を意味するでしょうから、それもできません。そのような状況下で、過酷なメニューは際限なくエスカレートする可能性があります。

 もちろん上司・先輩社員のサポートがあるとはいえ、入ったばかりの新人たちですから、会社側は各人の体力や体質を熟知しているわけではないでしょう。復路の帰還が深夜に及ぶ長期距離の行軍は、かなりリスキーです。怪我人や病人が出なくて本当によかったと思いますが、そうしたリスクを負って、なお身につけるべき精神力なるものがあるのでしょうか。

 ビジョン・ミッション暗記、エンドレスラジオ体操というのも、相当にヘンテコです。限界までの大声とか、真面目で気合いの入った体操。それは、定量的な評価があり得ず、判定する側の主観によって、いかようにも解釈が可能です。だからこそ、過酷なメニューが際限なくエスカレートする可能性があるわけで、主観によって合否が決められ、罰が与えられるというのは「しごき」や「いじめ」と変わるところがないように思います。

 さて、これらのメニューは、その狙い通りの成果に結びつくものでしょうか。

 自分の限界までの大きな声を出せと言っても、なかなか大きな声が出るものではない。そこで、「もっと大きな声を出せ」と指示されて、だんだん声が大きくなる。これによって「最初はこのくらいの力加減でいいだろう」という考え方を払拭させるというのが狙いだそうです。

 大きな声を出したり、気合いの入ったラジオ体操をしたりというのが、ビジネスを遂行する上での能力なり、やる気を象徴する、もしくは代用する、というのはアナロジーの濫用・悪用というべきでしょう。意味があることとは、私には思えません。

 王将にしろ、この中堅企業にしろ、苦心して研修企画を練ったのでしょう。経営者の思いが込もっていることもわかります。

 しかし、精神論だけでは人は育たないでしょう。教育効果について検証したり、専門家の意見を採りいれるなどして、リーズナブルなメニューの構築をするべきです。

経営 X 人事 特集TOPに戻る

関連記事

 

間杉俊彦 [ダイヤモンド社 人材開発編集部副部長]

1961年、東京都生まれ。1986年 、早稲田大学第一文学部文芸専修卒業、ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属され、以後、記者として流通、家電、化学・医薬品、運輸サービスなどの各業界を担当。2000年 週刊ダイヤモンド副編集長。2006年 人材開発編集部副部長。著書に『だから若手が辞めていく』(ダイヤモンド社刊)

 


なぜ職場で人が育たなくなったのか

「なぜ職場で人が育たなくなったか」をテーマに、その背景と要因を考える。そして研究者や識者の知恵を借りながら、「職場で人が育つ方法」を提示していく。

「なぜ職場で人が育たなくなったのか」

⇒バックナンバー一覧