どん底から再浮上する

――昨年、ケガをされて最低成績になったときはどのような心境でしたか。

十亀 昨年は、最初は抑えだったんですけれど、途中から先発に変わって、中継ぎにもなって、すごく忙しい一年だったんです。そんな中で7月に故障して一番よくない成績が出たのは、いろんなことが重なったこともありますけれども、自分の中に問題があったのだと思います。それにはどうすればいいかっていうのを考えさせられた一年でしたね。

 僕は7月ぐらいに二軍に落ちたとき、そこから今年は上がらない、一軍に上がらないつもりで来年に向けて準備をしたんです。普通だったら10月、11月から来年に向けての準備になるんですけど、僕はもう今シーズンは諦めて来年に向けてっていう目で前を見て進めたことが、今年につながってるかなと思います。

 でも、つらいっちゃつらい。やっぱりプロ野球というのは一軍で投げて打って守って攻めたりするのが仕事ですから。いくら二軍で頑張ってもあまり意味がないですからね。

――僕は近くで見てたので、もう一度体づくりをきちっとして、来年に備えるんだっていう準備を本当にしっかりされてて。人間だから、やけを起こすじゃないけど、そういう選手もいると思うんですよね。

 でも、十亀投手は計画的にしっかりダイエットされたのもあったし、いろんなことをしっかりやられて、今回のシーズンの成績を残されてるというのは、すごいことだなと思いますね。

十亀 いや、ホントは焦りましたよ、僕も。プロになって3年目だったんですけども、やらなきゃいけない年、時期だったんで、そういう思いが強すぎて空回りしたのかもしれません。一回ちょっと落ち着けと、体と自分と向き合える時間をつくれと言われたような気がするんで、その時間はほんとに無駄じゃなかったと思います。僕自身は。

稼げる選手と稼げない選手の差

――一軍になれないまま終わる選手の方も大勢いらっしゃると思うんですけども、一軍になれる人と、どうでない人の違いは、どこにあるんでしょうか。

十亀 違いって言われても難しいですね。辞めていく人を見ると、年齢というのもあるかもしれないですけど、若い選手で早々にクビを切られるというのは何かしら原因がありますね。故障かもしれませんし、メンタルの面もあると思いますし、いいものを持ってても活躍できない人もいますし。でも、やっぱり気持ちの面が一番強いかなと思います。

十亀投手がとっているのは、エースにふさわしい英雄のポーズ。股関節の柔軟性を高めるとともに気持ちを前向きにする効果もあるので、十亀選手にはピッタリだ。

――僕も野球に関わらずいろんな一流の選手を見させてもらってるんですが、皆さん同じぐらいに能力は高いです。何が変わるかっていうと、メンタルの安定というか、五郎丸選手じゃないけどルーティーンみたいなことをいかに淡々とこなしていけるかが、僕は鍵だと思いますね。そこにばらつきがある選手はやっぱり成績もばらつくし、ケガもする。

 野球の場合は確率のスポーツだから、防御率や打率を上げるにはやるべきことをしっかり長くやれるかどうか。一流選手は、この時期は休むべきだとか、やるべきことが全部明確なんですよね。

十亀 考え方の差は大きく出ると思います。僕は一軍も二軍も経験してるんで、一軍で何億も稼ぐ選手はいろんな部分を気にしてますね。ちょっと違和感があったら、すぐにトレーニングをやめるとか。ケガをしてもただ自然治癒に任せて待っている選手と、自分からいろんな治療院に行って、できるだけ早く治して現場復帰しようって考えている選手の差は大きいんです。そういうところが、言葉は過激かもしれないですけど、稼げる選手と稼げない選手の差かなと思いますね。

――そういう一流のプロ意識というのは、培われていくものですか。それとも持って生まれたものなのか。

十亀 人それぞれだと思います。僕は社会人を2年経験してるので、お金の大切さもわかりますし、プロとしてどのようにやっていかないといけないのかもわかって入ったつもりなんで、高卒の選手とはちょっと意識は違うかもしれないですね。高卒でいきなり大きなお金をもらって、好きに使うのもありですけれども。お金の大切さをわかってるからこそ、長くやらなきゃと思ってる自分もいるんで。僕は社会人の経験を通して、そういう意識が培われたかなとは考えています。

――最後に、これからの目標について教えてください。

十亀 ケガをしないことが一番ですし、そのためにどうやって何をしていくかを考えていくことが大事だと思うんで、ヨガやトレーニングを続けて、しっかりと胸を張って歩けるような選手になりたいと思ってます。