民主党の菅直人代表が、第94代(61人目)の首相に選出されました。菅新内閣は、鳩山前内閣が残した山積する課題を丸ごと引き継いでの船出となります。

 この山積するさまざまな課題を克服していくためには、わが国の将来を見据えた「中長期」的な視野と、混迷する政局の安定化のため1ヵ月後に控えた参議院選挙を睨んだ「短期」的視野をも兼ね備えた「複眼」的視野での政権運営が求められます。

 そもそも、鳩山前内閣が結果的に短命に終わったのはなぜでしょうか? それは、小沢幹事長と鳩山首相、この2人の間に生じていた「矛盾」が原因だったのではないかと私は考えます。具体的にいえばそれは、

・中長期的な政権基盤確立のために、まずは7月に行なわれる参議院選挙での勝利という、短期的視野を優先させる小沢前幹事長

・時間軸を持たないまま、政権運営を行なった鳩山前首相

という「権力の二重構造」の中で生じた「時間軸による価値観の矛盾」です。鳩山政権の崩壊は、この矛盾を克服できなかった末路だといえます。

 そして今度は、新たな首相となった菅氏にその課題が突きつけられています。権力の二重構造から脱却し、自らがどのような時間軸を持って政権運営を行なっていくのか。その力量が問われているのです。

環境問題も抱える
時間軸による価値観の矛盾

 「環境と経済をどのように両立させていくか」という議論も、見方を変えれば「環境問題という中長期的な課題と、短期的な経済の視点という、時間軸による価値観の矛盾」の問題です。

 例えば、LED照明や太陽光発電は、長く使うことで環境的にも経済的にもメリットが享受できる訳ですが、短期的な経済負担の大きさゆえ、どうしても二の足を踏んでしまいがちです。このケースのように環境ビジネスの現場では、「経済的に、長期的メリットが享受できるものの、短期的には負担増となるため、なかなか受け入れてもらえない」という嘆きをよく耳にします。まさに、時間軸による価値観の矛盾の典型的な事例です。

 しかし、もし経済的に長期的な辻褄が合うのであれば、金融の仕組みを生かすことで時間軸を短期に合わせることができます。

 具体的には、リースを導入するというのも一案です。特に地方自治体などは、国からの補助金を頼りに環境設備の導入を検討するケースが多いのですが、リースの仕組みを導入することで、導入可能性を高めることができます。