韓国社会にはびこる拝金主義への怒りが大ヒット映画『ベテラン』を生んだ『ベテラン』 12月12日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー 
配給:CJ Entertainment Japan ©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

韓国国内で1300万人を動員し、2015年に記録的大ヒットとなった韓国映画「ベテラン」。巨大財閥グループの御曹司による悪行を、正義感の強いベテラン刑事がとっちめる痛快なアクション劇だ。「ナッツ・リターン事件」をはじめ、韓国でたびたび問題視される特権階級に対して、赤裸々な社会風刺が込められている。監督と脚本を手がけたリュ・スンワン監督にその狙いを聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

――この映画で表現したかったテーマは何ですか。

 少し抽象的な言い方かもしれませんが、「人が人に接する時の態度」をテーマにしたいと思ったんです。

 韓国で実際にあった事件として、ある労働者がある企業の経営陣から、ひどい肉体的・精神的ダメージを被ったのですが、金でうやむやにされてしまった。その労働者は悔しくて心情をマスコミに訴えていたのですが、インタビューの中で泣きながら、「人が人に対して、どうしてこんなに残酷なことができるのだろうか」と訴えかけていたんですよね。

 そのインタビューがずっと私の頭から離れなくて、いつしか怒りに変わり、「金は人格を超えられるものなのか」という疑問も浮かんできました。

 映画のなかのさまざまなエピソードは、韓国で実際に起きた、あるいは類似した事件を基にしています。それらがこの映画を作る原動力になりました。

――そうした出発点が、メインストーリである、熱血刑事と財閥御曹司の熾烈なバトルに発展したのはどうしてですか。

 韓国社会で繰り返される経済権力者の悪行は、なぜ無くならないのか、なぜ起きてしまうのか、ずっと考えていました。そうした中で、私の作品では、正義の主人公が悪を徹底的に懲罰する、悪に対して勝利する姿を描きたいと思ったのです。

――韓国国民も監督と同じような感情を抱いているのでしょうね。

 この映画の興行的ヒットの背景には、そうした部分が作用したのではないかなと思います。韓国にも司法による正義が実現するんだってことを確かめたい、国民は熱望しているんです。