東芝不正会計問題のもう一方の主役である新日本監査法人に、金融庁の処分が下った。トップが責任を取り改革案を掲げたものの、現場からは不満が噴出。信頼回復までの道のりは前途多難である。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史、小島健志)
年の瀬も迫った2015年12月22日午後6時。新日本監査法人の会議室には、数百人の幹部社員(パートナー)たちが集結していた。
パートナーズフォーラムと称されるこの会合を取り仕切っていたのは、大木一也・経営専務理事。およそ3500人もの公認会計士を擁する、監査法人業界最大手の首脳として、ことさらに組織改革の必要性を強く訴え掛けた。
それもこの日、東芝の不正会計を見落とした新日本に対し、ついに金融庁が処分を下したからだ。
東芝は15年9月、過去7年間で実に2248億円もの利益を不正に水増ししていた決算を修正。この問題に絡み、新日本は10~13年度の3期分の有価証券報告書の監査で注意を怠り、東芝の財務書類には「虚偽がない」と適正意見を表明していた。
新日本の監督官庁として顔に泥を塗られた金融庁もこれを見過ごすわけにはいかず、今回、新規契約業務の3カ月間停止処分と業務改善命令に踏み切った。さらに、08年に制度が導入されて以来初となる「課徴金」命令を発動。東芝から得ていた監査報酬の2年分に当たる、21億円の納付を命じた。
これに呼応するかのように新日本も内部処分を発表(下図参照)。トップの英公一理事長が16年1月末での引責辞任を決めたことで、金融庁のメンツは何とか保たれた格好だ。東芝の監査を担当した現場責任者ら6人は事実上の“クビ”にし、残った経営執行部幹部らの報酬も減額する。
ところが、である。この処分と併せて、パートナーズフォーラムで内示された組織改革案の内容に対し、早くも内部から反発の声が上がっているのだ。
それもそのはず。改革案には、監査の品質管理を改めて徹底するための項目がズラリと並んでいるのだが、その必要性を訴える当の大木専務こそ、監査の現場を束ねてきたトップだったからだ。