「取引の天才」トランプ氏
不動産王の「自己ブランディング」の凄み

 実際にそう思えるふしもある。

 先月21日、特定候補に対する言及を避けてきたオバマ大統領が「経済的苦境にあるブルーカラーに排外主義をあおっている」とトランプ批判を開始、ヒラリー・クリントン氏も歩調を合わせるかのように同様の主張をしている。

 トランプ支持者に「右寄りで低所得の白人労働者」というレッテルを貼ることができれば、それに迎合しない者は「人権を尊重し理性的な判断ができるアメリカ人」と位置づけ、自分たちの主張に囲い込むことができる。これは「フレーム効果」という古典的な情報操作のテクニックのひとつだ。

 もちろん、ブルーカラーに排外主義をあおっている部分もあるのだろう。ただ、39%という高い支持率は、それだけでは説明できない。そこで浮かび上がるのが、不動産王という地位を獲得できたビジネスマンとしてのスキルや戦略が、選挙戦でも活かされているのではないかという可能性だ。

 実際に、トランプ氏は政治家には必要不可欠な「自己ブランディング」によって、ここまでの成功を手にしてきている。

 日本ではトランプ氏のことは「差別主義者で、目立ちたがり屋の放言おじさん」ととらえられているが、アメリカでは、「取引の天才」というイメージも強い。ニューヨークの不動産市場という、生き馬の目を抜く世界でめきめきと頭角をあらわし、一代で巨万の富を築いたからだ。

 もちろん、ああいう性格なので自分自身でもそうふれまわっている。「トランプ自伝」(ちくま文庫)では、「取引をうまく行う能力は、生まれつきのもの」と自画自賛し、「私にとって取引が芸術だ」と強いこだわりをみせていることからも、トランプ氏の人間性を読み解くうえで欠かせないものだということがわかる。

 その「取引」でトランプ氏が重要視しているのが、有名な「レバレッジをきかせる」(相手が望むものをもって交渉を有利に進める)ことや「市場を知る」ことなのだが、そのなかにトランプ氏ならではという独自のノウハウがある。

 それが、「自分を宣伝する」ということだ。

 トランプ氏は若い頃から女性問題などさまざまなスキャンダルで全米を騒がせてきているが、そのようなお騒がせセレブの立場から、ビジネスにおける情報戦でマスコミを最大限利用すべきという結論に至っているのだ。