原油価格は下げ止まらず、株価も下落トレンドが続く中、日本経済にも暗雲が垂れ込めてきた。総崩れとなった市場はいつ正常化するのか。鍵を握るのは、米国の利上げの動向だ。

 円高の動きが加速している。1月20日、ドル円レートは一時115円台まで上昇。これは日本銀行が追加緩和を実施した直後(2014年11月)と同じ円高水準だ。

 背景には、短期・長期両面の要因がある。短期的な要因は、年初来の株安と原油安による世界的なリスクオフの加速だ。海外のヘッジファンドが円買いに動いていることもあり、年初から円高トレンドが続いている。また、このところ活発だった外国株式の投資信託が株安で大きく値下がりし、投げ売りが始まっている。その過程でドルが売られ円が買われて「ドル円相場の資金の流れが逆回転している」(佐々木融・JPモルガン・チェース銀行市場調査本部長)。

 長期的な要因は、貿易赤字の縮小と経常黒字の拡大だ。輸入で円をドルに替えるよりも、輸出でドルを円に替える需要の方が大きいため、円高が進む。

名目実効為替レートで見てもドル円は15年6月を底に反転しており、円高トレンドが続いていることが分かる。

 図で示したように、日経平均株価は円高が進むと下落する傾向が強い。日経平均に占める輸出企業の比率が大きく、円高で輸出企業の採算が悪化するとみられているためだ。20日に1万7000円を割り込んだ株価が、さらなる円高進行で底割れするリスクは否定できない。

 こうした中、マーケットで急浮上しているのが日銀による追加緩和観測だ。株価とドル円レートだけを見れば、前回追加緩和を実施した14年10月とほぼ同じ水準まで戻ってしまっている。1月28~29日に開かれる日銀政策決定会合で、追加緩和が決定される可能性がないとは言い切れない。

「ドル円が116円を割り込めば踏み切るだろう」(髙島修・シティグループ証券チーフFXストラテジスト)、「今のマーケットの混乱は日銀の追加緩和だけで解決できるものではない」(森田京平・バークレイズ証券チーフエコノミスト)と見方はさまざまだ。