日本では、新品時だけ価格が異常に高く、中古になると値段が大きく下がる。

だが、それを使うときの価値は新品とさほど変わらない。この中古価格と使用価値との歪みに着目すれば、誰でもお金持ちになれるというのが『ベンツは20万円で買え!』の内容だ。「新品神話」を抱く日本人に多くのヒントを与えるエッセイの一部を紹介しよう。

もう理想は追わない
すべてをあきらめる

 男らしさを証明するための「支払った金額自慢」からは、もう卒業しよう。

 インフラの整った日本では、少しだけ妥協すれば、ほぼ理想のものが激安で手に入る。近所に売っているものだけを買っていても、十分生活ができる。近所に楽しい友人たちが住んでいるだけで、人生は楽しい。

 理想を追い求めるのはやめて、すべてをあきらめよう。

現代の日本に生まれただけで勝ち組だ。ガダルカナル島や硫黄島で玉砕した兵隊さんのことを思えば、豊かになった国だとはいえ、贅沢をしていられない。

 マネーゲームは、野球のように明確な対戦相手がいて、点数で勝敗が決まる競技ではなく、サッカーのように終了時間が決まっているわけでもない。モータースポーツのように、時間を競う競技でもない。誰もがみんな見えない敵と戦っているのだ。戦い続けると、疲れてしまう。

 200万円で購入した事務所に愉快な仲間が集い、20万円で購入した中古のメルセデス・ベンツのオープンカーに乗って、寺尾聰のCDを聴いて、いつも財布に20万円以上入っているだけで、幸せを感じる。煩悩を断ち切り、すべてをあきらめよう。

 そのためには、集中的に仕事をして、自分の時間を増やしてみよう。

 現在の日本は、驚くほどの低価格で利用できる娯楽が揃っている。価格の歪みをできるだけ早めに発見すれば、低コストの人生を謳歌できる。

 それだけで人生が楽しくなる。

時間と財務にコントロールされない、自由な人生を目指そう。

 生きながら、解放されるのだ。