さらにいえば、今回の「マイナス金利」導入の効果は確かに不意を突いたわけですが、その「ショック療法」を、金融政策決定会合でもあれだけの反対の中、無理にとも思えるやり方で導入したのはなぜでしょうか。それは、効き目がどうなるかわからないが、とにかく、ショックを与えることだったのでしょう。

 このショック療法の意味を考えてみましょう。それは、自ら現状維持政策を旨としている「政府」に真剣な経済の構造改革の動きを促していると考えられるのではないでしょうか。「こんなに無理をしてまで日銀はやっているよ」ということを政府に示したのではないでしょうか。そういう意味では、とにかく強いやる気を示し、なんとなくの強い期待を盛り上げたと考えられます。麻生太郎財務相もよく言っていますが「金融政策にできることは限られている」のですから。政治的にも、春闘前のタイミングが大事だったのかもしれません。

 このような「マイナス金利」導入には無理があり「やりすぎ感」は否めません。導入の部分だけではなくて、本来は黒田総裁が立てている計画の全体像を知りたいところです。

 そして、日銀は、日本の循環器系の主治医として、この療法(マイナス金利)の「本当の考え(効き目)」と「今後どうなるのか」を国民に説明してほしいものです。29日の会見の説明では、国民はよく分からなかったのではないでしょうか。分からない薬の効き目は薄くなるものです。気合だけでは限界があります。

※「宿輪ゼミ」は2015年9月に、会員が“1万人”を超えました。
※連載は自身の研究に基づく個人的なものであり、所属する組織とは全く関係ありません。

【著者紹介】
しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、来年の4月で10周年、まもなく200回開催、9月に会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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