「夫婦で年収600万円をめざす!」というサブタイトルに興味を持って、花輪陽子『二人で時代を生き抜くお金管理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本を読んでみた。

 勤労者世帯の平均的な年収は400万円台前半だから、夫婦共稼ぎで600万円という設定は、現実的で想定読者が多いだろう。しかし、この本の著者も言うとおり、年収600万円は多くもあり少なくもある金額だ。おカネの使い方、つまりは生活の仕方で、満足にも不足にもなるレベルだろう。

 著者は「昭和の時代遅れのライフスタイルでは破産する可能性もあります」と警告する。そして、時代遅れのライフスタイルとは、家とクルマを買い、生命保険にたくさん入り、夫だけが外で働き、老後は年金と退職金で国と会社を頼るような暮らしだという。

 週刊ダイヤモンドの読者は、収入・年齢共に勤労者の平均よりもやや上の人が多いだろうから、600万円に優越感を持つ一方で、生活を「時代遅れ」と言われて、愕然とする方もいるのではないだろうか。

 詳しくは先の本を読んでいただきたいが、花輪氏は、早めに結婚して、共稼ぎで、賃貸の家に住み、自動車代(経費が大きい!)と生命保険を節約し、早めの貯蓄と自己投資に励む生活を推奨する。

 稼ぎ手が2人いると、お互いのリスクヘッジにもなるし、生命保険に加入せずにすむ点がいい。それに、若者は自動車を「格好のよい」消費財だと思わなくなった。

 この著者の偉いところは、将来の収入につながるスキルアップや社交のための費用をしっかり確保することの重要性を説いている点だ。「夫のおこづかいが月3万円では出世しない」という項目をわざわざ立てて、「収入アップをめざすうえで、交際費は非常に大切です。とくに、男性はケチだと思われると、致命的に仕事に響きます」と書いている。この本を家に持って帰って、妻が見ることになっても不都合がないことを、男性読者にはお知らせしておこう。