菅内閣の支持率が、発足直後の60%台から2週間ほどで50%台に低下した。これは、菅首相の消費税を巡る発言が影響したとみられている。前回、菅首相が「しゃべりすぎること」を懸念材料として指摘した(第51回)。菅首相が財政再建の重要性を訴えるのは正しいが、消費税について「自民党が提案している10%を1つの参考にしたい」というのは踏み込みすぎだろう。

 いずれにせよ、鳩山由紀夫前首相が「4年間は消費税率を上げない」と発言していたことからすれば、ここにきての民主・自民両党による消費税増税大合唱は、非常に唐突感が強い。今回は、「今なぜ消費税なのか」を考える。

消費税論議は、自民党が
中道左派政党と協力した時に進展してきた

 消費税増税の議論は、今始まったというわけではない。日本の財政赤字が先進国の中で最悪の状況にあることは国民もよく知っている。しかし、二大政党がともに選挙戦で消費税増税を訴えることは過去なかったことだ。そこで今回は、過去の消費税論議を振り返るところから始めたい。

 最初に消費税導入を検討したのは、大平正芳内閣(1978-80年)である。大平氏は、自らの蔵相在任時に赤字国債を発行した責任を痛感し、首相就任と同時に財政再建に取り組んだ。しかし、その試みは、自民党が国会で安定多数を維持しながら挫折した。野党および自民党内から猛反対が起き、1979年の総選挙で自民党が惨敗したからである。

 次に、中曽根康弘内閣(1982-87年)が1986年の衆参同時選挙で大勝した後、「売上税」導入を表明した。しかし、中曽根氏が選挙時に「大型間接税と称するものをやる考えはない」と発言していたことから野党が「公約違反」だと猛反発した。

 更に、中曽根内閣が自民党内の根回しを怠った結果、党内から反対派が次々と現れた。中曽根内閣も衆参両院で安定多数を確保しながら「売上税」の導入に失敗したのである。