鳩山由紀夫首相が辞任し、菅直人副総理・財務大臣が新たに首相に就任した。菅氏は民主党代表選から組閣・党役員人事、国民新党との駆け引きで手際の良さを見せて、政権誕生直後の支持率が60%を超えた。
鳩山・小沢ダブル辞任への
自民党の危機管理意識の欠如
一方、普天間基地移設問題で鳩山政権を追い込んだはずの自民党は支持率を大きく下げた。前回、普天間基地移設問題での鳩山政権への批判は、いずれ自民党に降りかかると警告した(第50回)。菅政権の誕生で、自民党はより深刻な危機に直面した。
鳩山・小沢一郎両氏の辞任は、9回裏の逆転満塁ホームランのようだ。その鮮やかさに、「5月末」の期限設定は、「辞任カード」を切るための仕掛けだったという指摘すら出ている。さすがにそれは考えすぎだが、自民党はもう少し「5月末」のリスクを管理すべきだっただろう。
森喜朗元首相は自民党執行部に内閣不信任案の早期提出を訴えていた。鳩山政権の総辞職を防ぐためだったという。「5月末」に訪れる自民党の危険性を察した「政局眼」はさすがだったが、執行部はこれを無視した。
しかし、それ以上に深刻なのは、自民党が国会で政策論争を行ってこなかったことだ。ダブル辞任で「政治とカネ」「普天間」が消えてしまうと、国民の目には自民党はなにもしてこなかったと映るようになるからだ。
この連載では、自民党が「政権交代ある民主主義に対応する政党」に生まれ変わるべきと主張してきた(第34回)。それは、積極的に対案を出して、小選挙区制下で政権選択ができるようになった有権者に応えることだ。ところが自民党は、政権交代とは「自民党へのお仕置き」であり、民主党が失政を犯せばすぐに政権の座に戻れると考えた。
だが、鳩山政権が迷走しても、自民党への支持は戻らなかった。国民は自民党政権の安易な復活を望んでいないからだ。また、「政治とカネ」「普天間」はそもそも自民党政権期に起こっていた問題なのに、自民党が積極的に対応しないことにも、国民は不信感を持った。