日本銀行は金融機関が日銀に預ける超過準備(法定基準を超えて日銀に預けている資金)の一部に、マイナス金利を適用する政策を決定した。
ユーロ圏、スイス、デンマーク、スウェーデンでも中央銀行が超過準備にマイナス金利を課す政策を行っている。先行事例である欧州では預金金利はどうなっているのだろうか。
「これはスキャンダルだ。恥知らずな行為だ」。昨年6月、スイスの年金基金協会会長はそう言って怒りをあらわにした。大手銀行が大口預金にマイナス3%を適用すると発表したからだ。その大手銀行の幹部は、マイナス金利政策と金融規制強化のコストを顧客に転嫁せざるを得ないと釈明していた。
デンマークでは、保険会社・年金の口座は昨年1月ごろから、非金融企業の口座は昨年4月ごろから金利がマイナス圏に入った。預金の目減りを嫌う企業の中には、法人税を早めに多めに納め、後で還付請求する傾向が表れている。
一方、個人の預金は機関投資家や企業の預金と違って金額が小さく、マイナス金利になると現金の引き出しが広がりやすい。このため、欧州でも個人預金がマイナス金利になっているケースは例外的だ。銀行経営者は「個人から利息を徴収しようとしても、理解は得られない」(スウェーデンの大手銀行幹部)とちゅうちょしている。
日本でも個人預金がマイナス金利になる確率は低い。ただし、日銀が金融機関に課すマイナス金利を引き下げていく可能性があると、黒田東彦・日銀総裁が強調しているため、機関投資家や企業の大口預金がいずれマイナス金利になる可能性は否定できない。