高岡浩三の「企業の通信簿」#15Photo:Bloomberg/gettyimages

不正会計問題に揺れるニデックで、永守重信名誉会長が引退を決めた。特集『高岡浩三の「企業の通信簿」』の本記事では、元ネスレ日本CEOの高岡浩三氏が、経営者の「賞味期限」とニデック騒動が象徴する日本ガバナンスの病理に迫る。

経営者の「賞味期限」と出口戦略の不全
ニデックの「カリスマ」永守氏の功罪

 ニデック(旧日本電産)の永守重信名誉会長が2月26日に辞任しました。不正会計問題について第三者委員会が調査を進める中、2025年12月の段階で代表取締役グローバルグループ代表を辞任していましたが、今回ついに経営から引退するようです。

 3月3日に公表された第三者委の報告書では、「ニデックグループでは業績プレッシャーを背景にした会計不正の発覚が相次いでいた。それにもかかわらず、永守氏は、高すぎる業績目標の達成を求め続けた」「会計不正について最も責めを負うべきなのは、永守氏であると言わざるを得ない」と責任が指摘されています。

 僕は、経営者には必ず「賞味期限」があると考えています。人間には寿命があるのと同じで、一人のリーダーが特定の企業において最高のパフォーマンスを発揮し続けられる期間には限界があるんですよ。本来、それを自分で悟って身を引くのが一番かっこええし、会社のためにもなるんやけど、実際にそれができる人は極めて少ないのが現実です。

 数少ない例外が、サイバーエージェントの藤田晋さんでしょう。彼は自ら「辞める」と宣言し、後継者選びにおいて「自分が選ぶ、自分が育てる」という属人的なやり方を捨て、取締役会や指名諮問委員会という「仕組み」をうまく活用した。経営者にとって、自分の代わりを務める人間を客観的に選ばせるというのは、実はものすごく勇気が要ることなんです。

 一方で、日本企業の多くが「失われた30年」から抜け出せないでいるのは、バブル崩壊後にイノベーションを起こせる経営者がほとんどいなかったこと、そしてその交代が適切に行われなかったことが諸悪の根源やと僕は思います。

 今、ガバナンスの不全が最も顕著に表れているのがニデックです。永守さんとはかつて食事を共にしたことがあります。当時の京都の財界トップが集まった8人ほどの席でしたが、正面に座った永守さんは本当に魅力的で、圧倒的なエネルギーを持っていました。

 彼は株主総会を「一年で一番大事な俺の場だ」と言い切り、司会から何から全部自分で仕切る。文句を言う株主には「俺のやってる会社や、嫌なら株を売れ」と言い放つ。そんな彼の姿勢に、会場からは拍手が起こるわけです。それほどのカリスマであり、実績も十分でした。