「読み手にストレスをかけたくない」と
一文字一文字の伝え方にこだわる
土江 そこからは発売まで、みっちり一緒に時を過ごしましたね(笑)。佐々木さんはとにかく推敲の時間が長かった。コピーライターなので、1行1行をコピーのように書かれたと思うのですが。
佐々木 読者目線で読み返したときに違和感を覚えたら、また書き直して…を何度も何度も繰り返しました。
土江 ようやく完成した後も、ゲラのチェックでまた時間がかかって。「1ページの最後はこの文字で終わりたくない」とか、「この話は次のページにまたがらせたくないから、前のページまでで収めたい」とか。佐々木さんが徹底的に読みやすさを追求するから、修正が半端ない。でも、そのおかげでとても読みやすい1冊になったと思っています。
佐々木 僕はビジネス書が大好きでよく読むのですが、内容はとてもいいのにページのレイアウトがいまいちで頭に入ってこないケースがとても多いと感じていたんです。いい話でも、ページをまたぐと思考が分断されますよね。挿し絵や図でも、急に現れて「これは何だ?」と戸惑っていたら、ページをめくったところに説明があったりする。…そういうストレスを、読み手に感じさせたくないと思ったんです。
土江 あまりにこだわりの強さに、初めは「え?」って思いましたけれど、途中であきらめました(笑)。読者目線のこだわりなので、思う存分やってもらおうと。
佐々木 私の本業である広告って、誰も読みたくないんですよ。だけど「思わず読んでしまう」という状態を目指して僕たちコピーライターは広告を作っているから、読み手のストレスには敏感なんです。
土江 本の冒頭に入れたじゃばらの図表へのこだわりも強かったですね(注:『伝え方が9割』には、本編を要約した取り外し可能な「超縮小版」が巻頭に挟み込まれている)。「ノー」を「イエス」にかえる技術と、「強いコトバ」をつくる5つの技術が記されていて、取り外して手帳に挟んでおけば、いつでも見られるようになっている。
佐々木 僕自身がそうなのですが、本を読んだそのときは「ためになったな」と思うけれど、あとで内容を忘れてしまうんですよね。忘れたくないので、本を持ち歩くんですけれど、本って結構重いので(笑)、いつかカバンから出してしまう時が来る。その経験から、必要なことがすべて書かれている「取り外しバージョン」が必要だと考えたのです。