宇宙はSF作品にとって究極の舞台。夢溢れるシーンの宝庫だが、これらのシーンに現実味はあるのだろうか。日々発展する今日の科学が、どこまで空想世界に迫ったか検証してみた。(「週刊ダイヤモンド」2010年6月12日号の特集「2010年 宇宙ビジネスの旅」より特別公開!)

疑問(1)
アニメのような戦闘、航行は可能か?

空想は科学の発展の原動力。Photo:AFLO

 宇宙空間での戦いや移動に関するシーンは、物理学の法則に反したシーンの宝庫だ。

 設定のリアリティさに定評のある国民的アニメ「機動戦士ガンダム」だが、酸素のない宇宙で火柱が上がったり爆音が響いたりするのに始まり、作用・反作用の法則に反して宇宙空間でキックやタックルをするシーンなど、戦闘シーンは演出過剰気味だ。

 「宇宙戦艦ヤマト」は光速の99%で航行するという設定だが、相対性理論によれば、動いている物体は質量が増加する。「エネルギーは速度を増やさず、質量を増やすことに使われてしまうので、莫大な燃料を積む必要があり現実的ではない」(宇宙物理学者の佐藤勝彦氏)そうだ。ヤマトの総重量は6.5万トンの設定なので、少なくとも水爆650億個分くらいのエネルギーを積む必要があるという。

 実際、スケールの大きい宇宙空間では相対性理論は軽視できず、厳密に計算する必要がある。たとえばGPS衛星。猛スピードで動く衛星は地上の時計よりゆっくり時間が進むが(特殊相対性理論)、一方で地球の重力が弱い影響で地上の時計より早く時間は進む(一般相対性理論)。この二つの影響を加減して、GPSの時計は地上の時計より100億分の4.45秒遅く進む設定にしてあるのだ。

[結論 ×] 物理法則は軽視できず

疑問(2)
スペースコロニーに現実味はある?

 ガンダムの舞台は宇宙空間に浮かぶ複数の巨大な筒形のスペースコロニー。筒の内部に再現した人工都市に人類の大半は移住していて、そのコロニーの一つが独立運動を開始するなど、現実味溢れる設定があった。