「そうそう、それが問題なんだ」と共感を得る
抽象的な説明ではピンと来ないと思いますので、早速、実例をご覧いただきたいと思います。「デジカタ」のロジックを下敷きにしながら、聞き手の感情を意識しながら再構成したのが下図のプレゼン資料です。
まず、イントロを工夫しています。
お客様の課題を羅列しても、興味をもっていただけませんから、「5000万」という数字だけを示す「つかみスライド」を見せながら、「何の数字だと思いますか?」と質問を投げかけます。
質問を投げかけられると、誰もが考え始めます。この「ちょっと考えてもらう」のが、プレゼンに惹きこむひとつの手法。しかも、数字は一瞬で把握できるうえにインパクトがあります。「数字+質問」は、イントロの「つかみ」としてきわめて有効なのです。
こうして興味を惹きつけたうえで、「紙カタログのコスト」「機会損失」「更新苦」というお客様の課題を提示。「そうそう、それが問題なんだよ」と共感してもらえるように、「ビジュアル+インパクトのある言葉」の組み合わせで構成します。詳しい話は口頭でしながら、スライドはビジュアル重視で直感に訴えるようにするのがコツです。
なお、ここでは、モノクロ写真に赤字の明朝体でメッセージを打ち出していますが、これは、「危機感」や「不安」などネガティブな感情を刺激するスライドの「型」のひとつ。こうした「型」を身につけるだけで、スライドの表現力は格段に向上します。
そして、お客様の共感を得たうえで、「紙カタログ」が「課題を生み出す原因」であることを提示。ここで、「たしかに、紙カタログには問題が多い」と感じてもらえれば、積極的にこの先の話を聞いてくれるはずです。ここまでがイントロに当たります。お客様に身を乗り出していただける構成になっているかどうか、何度もチェックすべき重要なパーツです。
「機能→メリット→未来像」を連打して「納得」を得る
次のスライドから「ボディ」に入ります。
まず、解決策として「デジカタ」を提示。そして、その詳細説明に入る前に、「デジカタ」がトップシェア商品であることを示すスライドを挿入しました。なぜなら、胡散臭いと思われていては、これ以降の話をまともに受け取っていただけないからです。なんらかの方法でお客様に「この人の話は信頼できる」と思ってもらわなければなりません。
そして、信頼を得たうえで「デジカタ」を導入する効果を示します。ここでの最大のポイントは、「商品・サービスの機能(特徴)」→「メリット(効用)」→「未来像」の順番に話を進めること(下図参照)。これが、お客様を納得から決断へと導くのに最も適した話の流れだからです。
まず、「デジカタ」の機能(特徴)を伝えます。ここで覚えておいていただきたいのは、ライバルに対する優位性を明示すること。お客様は、同種のサービスとの比較を気にしていますから、ボディ・スライド(7)のようなポジショニング・グラフを示します。
そして、その機能(特徴)によってお客様に提供できる具体的なメリットを提示します。重要なのは、ここで掲げるメリットがイントロで示した課題に対応していること。ご覧のように、「紙カタログ年間5000万円のコスト」が「10分の1」に減り、「機会損失」と「更新苦」が「ゼロ」になっています。このように、「課題」と「メリット」が確実に対応していることで、プレゼンの説得力が生まれるわけです。
ただ、これだけでは「押し」が足りません。そこで、お客様が望んでいる「未来像」を提示します。魅力的な未来を提示することで、決断に踏み出すように背中を押すのです。ここでは、「デジカタ」を導入することによって「売上3倍」にしたクライアントの実例を紹介しています。このように、ボディ・スライドは「機能(特徴)」→「メリット(効用)」→「未来像」の順番で構成します。
そして、最後ののスライドがエンディングになります。ここでは、「デジカタ」に込めた「念い」(おもい)をスライド化しました。真ん中に「念い」を打ち出すとともに、ポジティブな印象が伝わるカラー写真を多数並べました。
これはイントロのモノクロ写真との対比を意識したもの。ビジネスはお客様の課題を解決することですから、ビジネス・プレゼンは必ず「ネガティブ→ポジティブ」というストーリー展開になります。だから、エンディングはハッピー・エンドにするのが定石。このように、プレゼン資料全体のビジュアルにメリハリをつけることも、お客様の感情を動かすテクニックなのです。
こうして、社外プレゼンでは、「(1)課題」「(2)原因」「(3)解決策」「(4)効果」というロジックをベースに、聞き手が「(1)共感」「(2)信頼」「(3)納得」「(4)決断」という感情をたどることができるように工夫を凝らします。「ロジック」と「感情」の2つのレイヤーが、がっちりとかみ合うように一枚一枚のスライドを組み上げることができれば、必ず、聞き手からポジティブな反応が返ってくるプレゼン資料になるのです。