じっくり読み込んでも「忘れること」は忘れる
また、レビュー記事を書きはじめて気づいたことがあります。それは、「いくら熟読しても、実際には忘れていることのほうが多い」という現実。
読むスピードと理解度・記憶は、まったく比例しないということ。つまり、「書評を書くのだから、ゆっくりじっくり読まなければ……」というのは大いなる勘違いであり、ゆっくりじっくり読んだからといって、内容がよりしっかり頭に入るわけではないのです。
ここはかなり本質的な点です。
そりゃ世の中には類まれなる理解力・記憶力を持った人もいますから、そういう人はたった1度の熟読だけで深い読書体験ができるかもしれません。
しかし、おそらく大半の人は、本を1回読んだくらいで内容を完璧にインプット→記憶するなんてできないはず。
とはいえ、ここでガックリくる必要はありません。
「頭に入っていないことのほうが多い」ということは、裏を返せば、「忘れていないものの中に、自分にとって大切な部分が凝縮されている」ということだからです。
「なにか」が頭の片隅に残っているのだとすれば、少なくともその部分が自分にとって必要だということ。
その本から得られる価値のすべてはまさにそこにあり、1冊を読み通したことの意味は、その一節に出会えたことにある そういってしまってもいいと僕は信じています。
(第3回に続く 明日2/26公開予定)