産業革新機構と鴻海の間で揺れ動くシャープ。「決められない」シャープ経営陣は退陣し、若手に未来を委ねてはどうか? Photo:REUTERS/AFLO

 どうせこんなことだろうとは思っていたけれども――。

 2月5日放送の情報番組『ミヤネ屋』(日本テレビ系)に出演したとき、司会の宮根誠司さんから「シャープの支援は、結局のところ産業革新機構と鴻海のどちらになると思いますか?」と聞かれた筆者は、「決められないんじゃないですか?」と答えた。

 宮根さんはずっこけていたが、これは大阪読売テレビの番組だからといって、ウケを狙ったわけではない。筆者は本当に、シャープは鴻海と産業革新機構を行ったり来たりするだろうと思っていたからだ。

 その後、産業革新機構が盛り返していているという報道があったが、ショッキングだったのは、2月17日夜にダイヤモンド・オンラインに掲載された『週刊ダイヤモンド』の中村正毅記者の記事「揺れ動くシャープ支援、命運握る2人の社外取締役の動向」だろう。

 記事によると、鴻海寄りの2人の社外取締役の議決権を奪った上で、2月20日にもシャープが取締役会を開き、支援策の機関を決定するという。そもそも、そんな内部情報が外に漏れること自体、まともな経営状態とは言えない。

中途半端なシャープの延命策
三品教授の指摘を考察する

 また、それに先立って2月15日にダイヤモンド・オンラインに掲載された記事「シャープ再建は、もう手遅れ 失われた4年間の愚策」は、神戸大学の三品和広教授によるものだが、こちらもシャープの経営陣は心して拝読すべきだ。筆者にとって前職の大先輩でもある三品先生だが、そうしたことを除いても、筆者は三品先生のご意見に「ほぼ」フルアグリーである。

 三品先生が記事の中で行ったシャープに関する指摘をまとめると(1)すでに守るべき技術はない、(2)雇用を守るという名の下に戦略転換ができない、(3)オールジャパンに勝ち目はない、(4)中途半端なこの4年の延命策が無駄だった、ということである。すべてその通りである。これらの指摘について、筆者なりに考察してみたい。

 第一に、「すでに守るべき技術はない」という指摘について。シャープの液晶はユニークだが、企業が技術に投資をするのは、技術がより付加価値を高めるからだ。これはミクロ経済学の基本であり、経営学の初歩の初歩でもある。経済学部でも経営学部や商学部でも、1年生が勉強する内容だ。繰り返すが、シャープの液晶は技術的にはユニークだが、シャープの利益にはつながっていないし、将来的にもその目処は立っていない。

 民間企業の技術投資として、収益性にプラスに働かない技術に投資をすることはムダでしかなく、それに気づかず、「鴻海はシャープの液晶技術がほしいのでは」、「シャープの液晶技術を守れ」といった主張は、申し訳ないが、経済学部でも経営学部でも1年生レベルの教科書ができていないのと同じだ。オールジャパン構想もそうだ。弱者連合でどんな勝ち目があるというのか。