特別利害関係人――。経営再建中のシャープが今、会社法にあるこの解釈を巡って揺れている。大詰めを迎えたスポンサーの選定作業に、大きな影響があるためだ。国や銀行団、外資など多くのプレーヤーが入り乱れ、思惑が複雑に交錯するスポンサー選びが、足元でさらに混沌としてきた。(週刊ダイヤモンド編集部 中村正毅)
Photo by Masaki Nakamura
2月4日。午後に決算発表を控えたこの日、シャープは取締役会を開き、官民ファンドの産業革新機構と台湾・鴻海精密工業の2社に絞って、出資協議をする議案をなぜか2度も議決している。
その理由は、全部で13人いるシャープの取締役の中に、特別な利害関係の恐れがある人物が2人いたからだ。
その2人とは、メガバンク系の投資ファンド、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)の住田昌弘会長と、斎藤進一社長だ。
JISは昨年6月末、銀行団と連携して、シャープが発行するB種優先株250億円を傘下のファンドを通じて引き受けており、それに伴って、住田・斎藤の両氏がシャープの社外取締役に就任している。
その両名が、「優先株の取り扱いが一つの焦点になっている今回のスポンサー選定において、議決に加わることは法的に果たして適当なのか」という議論が、年明けからシャープ社内で湧き起っていた。
というのも、出資協議の中で、革新機構側は優先株の実質消却を、鴻海側は簿価での買い取りを提案している。議決によって利害が生じるJISの2人は、公正な議決権の行使が期待しにくいとみていたからだ。
同種の指摘を、顧問法律事務所からも受けていたシャープは、別の法律事務所にも依頼し確認を求めたが、もらった回答は、「特別な利害関係を有する恐れがあるため、議決には加わるべきではないというものだった」と、関係者は話す。