しかし、そもそも安倍政権が集団的自衛権に踏み出す大きな理由は、北朝鮮が米国を攻撃する事態に備えることにあったのではないか。つまり、世界最強の軍事国家たる米国にさえ攻撃を加えるといった、「何をするか分からない国家」として北朝鮮が想定されているのではなかったのか。とすれば、その北朝鮮がミサイルで原発を攻撃する危険性も当然排除されないはずであり、「万全の態勢」が整えなければならないはずである。

機能しないミサイル防衛システム
なぜ原発は“無防備”のまま再稼働か

 あるいは安倍政権は、そもそもPAC3には迎撃能力がないことが明らかになるのを恐れているのであろうか。確かに、日本全土を射程に収めるノドン・ミサイルは移動式のため発射の探知は極めて困難であるし、何十発も同時に発射されれば対応は不可能である。政府が、今回の事態を踏まえて米国の支援を仰ぎつつ次世代のミサイル防衛システムの強化に乗り出すと報じられていることは、巨額の税金を投じた現システムが機能していないことを如実に示している。

 それでは、次世代システムには防衛能力があるのか。例えば韓国政府は、PAC3より高い高度で迎撃可能なTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)システムを米国から導入する方針を固めた。しかし、韓国国防部の分析によれば、北朝鮮は38度線の近くに無数の長距離砲や多連装ロケットを配備しており、ソウル全域に1時間で2万5000発の砲弾を降らせることができるとのことである。とすれば、こうした短距離かつ短時間で着弾する無数のロケット弾に、そもそもTHAADシステムは役に立たない。

 同じく日本の場合も、ノドンやスカッドなどの弾道ミサイルを同時に多数発射されると、同システムでも対応できない。では、なぜ米国はTHAADシステムの導入を執拗に求めてくるのであろうか。軍事的には、対北朝鮮というよりは中国に照準を合わせたものであろうし、何よりも、同システムの巨額さ(必要経費だけでも1基で1000億円以上)に示される軍需産業の利害が背後にあると言えよう。

 以上のように様々な側面から検討してきたが、あらためて強調すべきは、安倍政権が北朝鮮のミサイルの脅威を煽れば煽るほど、なぜ原発を“無防備”のまま再稼働させるのかという根本問題に直面せざるを得ない、ということである。