こんにちは、鈴木寛です。
私の連載も随分と間が空いてしまいました。改めてお詫びするとともに、今回は近況のご報告と、大学入試改革についての誤解を解いていきたいと思います。
まず、2015年10月23日に改めて文部科学大臣補佐官に任命されました。前回の連載第40回『1億総活躍のトリガーは国民的な「学び直し」にあり』の翌日の閣議で決定されてから、補佐官業務にしばらく専念しておりました。下村博文前文科大臣に引き続き、馳浩文科大臣の下で教育制度改革を進めると共に、G7伊勢志摩首脳サミット(5月26日、27日)に合わせて倉敷市で開催される「G7倉敷教育大臣会合」(5月14日、15日)の準備などにあたっております。
「記述式」導入に否定的な新聞社各社
なぜ優秀な生徒が高校で低迷するのか?
さて、昨今話題になっている大学入試改革についてですが、文部科学省に設置された高大接続システム改革会議では、大学入試センター試験に代えて2020年度から導入予定の大学入学希望者テストにおいて、従来のマークシート式に加え、記述式に追加することを検討中です(2020年度短文記述、2024年度記述式本格導入予定)。しかし、この記述式の導入には、関係者の中に慎重な意見もあります。
こうした議論の最中、議論を正確にフォローし、もっともな提言を行っている『理念と実現性の接点を探れ』(2月7日 読売新聞朝刊)を除き、一部大手新聞では記述式を疑問視する論説が複数掲載されました。以下の社説をはじめ、記述式導入について反対する記事がありました。
『中外時評 「記述式」の暴走が心配だ』(1月24日 日本経済新聞朝刊)
『大学入試改革 見切り発車が混乱招く』(1月30日 朝日新聞朝刊)
『大学新テスト 改革ありきの迷走止めよ』(2月6日 産経新聞朝刊)
しかし、これらの社説では記述式テスト導入の意義があまり理解されていません。そもそも、日本の15歳はOECD(経済協力開発機構)のPISA調査という21世紀型のリテラシーを見るテストで、2012年に加盟国34ヵ国中、総合1位という実績をあげました。読解力、科学的リテラシーは1位、数学的リテラシーは2位で総合1位。これは現場の小中学校の先生方、学校を取り巻く多くの方々、家庭、民間教育の努力の成果と言っていいでしょう。
その背景には、現行の学習指導要領に盛り込まれた「言語活動の充実」を受け、学校で朝読書が徹底されたこと、コミュニティースクール、学校支援地域本部、放課後子ども教室などで地域住民や大学生の学習支援ボランティアによる読み聞かせや図書館整備の整理などの協力が増大したこと、経済的困難を抱える家庭の多い地域の学校へ教員の重点的な追加配置がされたことなど、多くの努力が成果をあげたこともあるのです。