日本では、新品時だけ価格が異常に高く、中古になると値段が大きく下がる。

だが、それを使うときの価値は新品とさほど変わらない。この中古価格と使用価値との歪みに着目すれば、誰でもお金持ちになれるというのが『ベンツは20万円で買え!』の内容だ。「新品神話」を抱く日本人に多くのヒントを与えるエッセイの一部を紹介しよう。

クルマを傷つけて落ち込むことほど
つまらないものはない

 新車や高額な中古車は、事故や故障のときの精神的ダメージが大きい。修理も完璧を目指すので、コストがかかる。車両保険に入ると、維持コストが膨らむ。

 安い中古車なら、車両保険も不要だ。小さなキズであれば、自分で修復すればいい。大きな事故で修理代がかさむときは、買い換えればいいだけの話だ。

 クルマのために激しく落ち込んだり、悲しんだりするのは、バカバカしいことだ。その点、安いクルマなら、なにがあっても精神的ダメージを受けることがない。

 新車や高額な中古車であれば、劣化防止のために、車庫保管かカーポートが必要で、その建設コストも高い。建築費用で中古車が1台買える。激安のクルマであれば、野ざらし放置プレイで十分だ。

 ワタクシのメルセデスも、冬期間、野外に放置プレイをしていたら、屋根に雪が積もって八甲田山状態になった。春になって掘り出したら、バッテリーは上がっていたが、ブースターケーブルで充電したら、なにもなかったように無事にエンジンがかかった。

 たとえ故障したとしても、さほど落ち込まないと思う。だって激安だから。安いクルマなら故障しても、ある程度、自分で修理できる。

 例えば、フェンダーが錆びたとき、ホームセンターで同じ色のスプレーを購入し、2回くらい塗装すれば目立たなくなる。予算は、下地処理用のプラサフを含めて3000円以下だ。手先の器用な人や、プラモデルを上手につくる人にはオススメである。

 この方法では元どおりにはならないが、走りにまったく影響はない。

 100万円以上のクルマならプロの板金屋に修復を依頼するほうがいいが、30万円以下の中古車であれば、DIYで十分だ。3メートルも離れれば、誰も気づかない。

 この塗装は、将来、不動産を購入したときに役立つ。物件にペンキを塗る訓練にもなるからだ。

 アメリカやメキシコに行くと、ドアだけ違う色に塗られたクルマが走っている。解体屋で同じ車種の部品を購入後、交換。同じ色に塗ることさえも面倒なのだろう。あるいは、恥ずかしさを乗り越える訓練を実施しているのかもしれない。

 アンニュイな平日の午後に、同じくクルマ好きの特殊工作員と一緒に近所の交通量の少ない広い道路で走行実験を実施する。同じ場所を、左回りで衛星のようにグルグル回る。左回りであれば、信号に引っかかる回数が少ないからだ。また、自分の所有する敷地で、壊れたクルマの修理をしたりするのは最高のヒマつぶしになる。

 ワタクシにとって、クルマは1分の1サイズの、実物大のプラモデルのようなものだ。