日本では、新品時だけ価格が異常に高く、中古になると値段が大きく下がる。
だが、それを使うときの価値は新品とさほど変わらない。この中古価格と使用価値との歪みに着目すれば、誰でもお金持ちになれるというのが『ベンツは20万円で買え!』の内容だ。「新品神話」を抱く日本人に多くのヒントを与えるエッセイの一部を紹介しよう。
海外でもクルマがあったほうがいい!
自由に楽しく過ごせる
アメリカ合衆国に住んでいたときは、最初の滞在地サンディエゴで、中古のメルセデス・ベンツ450SELを購入し、サンルーフを開けてフリーウェイを疾走していた。
地元の英字新聞の三行広告で発見し、売主との直接取引で購入したマシンだ。5900ドルの売却希望価格に対して、ソフトな指値を入れて5500ドルで購入した。
外国では英語を話せることも大切であるが、クルマを所有し、自分で運転できることのほうが重要だ。街を徒歩で移動していると、強盗や誘拐の被害に遭う確率が高くなる。
アメリカ上陸後2ヵ月目、深夜のLAでフリーウェイの道を間違え、乗り換えのために降りた出口がダウンタウンの治安の悪い場所だった。闇の中から突然現れた黒人の不審者が、大声でワーワー叫びながらワタクシのメルセデスのフロントガラスをドンドン叩く。
身の危険を感じたワタクシは、クラクションを鳴らし続け、発進。赤信号であったが、命には代えられない。アクセルを全開にしてその場から離脱した。金銭目当てか、あるいは、カージャックされてマシンを奪われていたかもしれない。
LAでは、メルセデスの助手席に、オーディションで知り合ったモデルや売れない女優を乗せ、ブイブイいわせていたのも、いまとなっては楽しい思い出だ。
クルマの中であれば、好き勝手ができる。徒歩や自転車ではしゃいでいたら、日本に強制送還されていたかもしれない。
事実、ジャネット・ジャクソンのミュージックビデオの撮影時、のちに有名美人歌手と交際する放送作家の太井ホガラ(仮名)ほか、日本人出演者10名と、着物を着てハリウッドの吉野家に向かって歩いていたら、クルマで走行中のアメリカ人から「ジャップ!」と罵られたこともあった。もし、クルマで移動していれば、そんな屈辱を受けることもなかった。
ある日、フリーウェイ405号線の勾配の急な上り坂をメルセデスに乗って疾走した。日の丸に「神風」と書かれたハチマキを頭に巻いて走行していたら、隣の車線のホンダ・シビックに乗ったラグビー選手のような巨大な黒人が、口を大きく開け、目を丸くして怯えていた。
そして、思いっきりアクセルを踏み、加速して、その黒人のクルマを引き離した。爽快だ。クルマがあれば、海外でも愉快に暮らせる。