ミャンマー進出戦略立案過程での2つの観点


今回は、4つの質問の中で、まずは、『「なぜ」ミャンマーに進出するのか』という質問について下記の観点から説明する。

ミャンマー進出戦略立案過程での2つの観点

a) 何が具体的な検討のテーマなのか
b) それを考える際にどのようなフレームワークがあるか


以下、具体的に見ていこう。

「なぜ」ミャンマーに進出するのか

a)検討のテーマ

(1)検討において重要な「振り返る勇気」とは

 進出の必要性を考えないで、進出を実施する会社は存在しない。いつでも、どんな企業であれ、検討のスタートポイントは、そもそもなぜミャンマーに進出すべきなのかからだ。ところが、色々と議論が進み、現地の情報が入り、理解が深まるに従って、いつの間にか皆「なぜそもそもミャンマーなのか」を忘れてしまい、進出すること自体が目的にすり替わってくる。ここに大きな落とし穴がある。
 色々検討した中で、いまさら後に引けないということもあるだろう。だが、常に本当にミャンマーに進出する必要があるのかに立ち返る勇気こそが、進出検討において最も求められる。

(2)「とりあえずミャンマー」になっていないか

 進出の目的は、現地での生産拠点確保のためなのか、消費市場として考えているのか、他の目的なのか、企業によって違うだろう。ところが、ミャンマー進出の相談を受けていると、そもそも「何のためにミャンマー進出を行いたいのか」が不明瞭なケースもある。中には、メディアの報道に踊らされて「とりあえずミャンマー」からスタートしている企業も存在する。
 ミャンマー進出は、その企業における大枠事業計画の「目的」を達成するための「手段」に過ぎない。一方で、その企業の事業計画を達成するための手段は、ミャンマー進出以外にも、色々あるだろう。その中で「目的」を達成するための最善手が、本当にミャンマー進出なのか、実際は日本で十分実現できるのではないか、もしくは別の国への進出のほうがよいのでは、と冷静に比較して検討する必要がある。
 また、仮に「ミャンマー市場への販売拡大を行おう」となったにしても、本当に自社で進出する必要はあるのか、現地の販売代理店に任せる形で十分ではないのか、といった論点も含めて、単純に「進出あるのみ」の議論にならないことが重要だ。

(3)そもそも、海外に進出する必要はあるのか

 ハンバーガーチェーンのフレッシュネスバーガーのように、海外進出1号店としてミャンマーを選ぶ企業もある。東南アジアの中でもタイのバンコクのように、日系料理店が乱立するようになると、より競争がないところから攻める利点もあるだろう。
 ただ、海外進出をこれから始める企業にとっては、ミャンマー以前の段階に、最初に検討すべきことは、「そもそも、海外に本当に進出する必要はあるのか」だ。どうしても、進出を検討する時には、それによるメリットばかりに目が行きがちだ。前向きなプランに邁進することで、日々のつらさから目を背けることもできてしまう。そんな時に、立ち止まって本当にそのメリットがあるのかと考えるのは、実は結構勇気がいることだ。ましてや、海外進出する場合のメリットと、しない場合のメリットを、ある程度数字に落とし込んで分析している実例は意外と少ない。