今回は、そもそもなぜミャンマーに注目が集まっているのかを整理し、8つの理由に集約してみたい。そして、なぜミャンマーでは日本ならではの優位性を発揮できるのか、述べていきたい。

理由1.低い賃金水準

 図表1-8が東南アジアにおける主要国の賃金水準だ。ミャンマーでの一般工職の月額基本給は、月127ドルと、人件費の上昇が続く中国(403ドル)より大幅に安く、また隣国のタイ(369ドル)、ベトナム(176ドル)などと比較しても、より低い水準にある。このように、ミャンマーは域内で最も賃金水準が低い上、インフレ率も比較的安定しているので、相対的優位性が高まっている。
 アジア各国に進出している日系企業が頭を悩ませている問題が、最低賃金の上昇だ。図表1-9に、アジア主要国の最低賃金の上昇率を指数化して比較した。インドネシアでは、2010年から比較して2015年には、なんと350%の上昇、つまり4.5倍にも増加している。それ以外の国々でも、同期間内に2倍程度に上昇している。今後も継続した上昇が予想される中で、より人件費の安い地域への移転は待ったなしの状況となっている。

 後で述べるとおり、賃金上昇はミャンマーにおいても今後の重要なリスクファクターではあるものの、現状の賃金水準自体は、依然として近隣諸国と比較すると魅力的な水準だ。そのため、近隣諸国で労働コストの上昇にさいなまれている製造業関係者にとって、ミャンマーは安価な労働力の供給地として魅力的に映る。