来年度予算の概算要求に向けたプロセスが動き出しました。しかし、これまでの動きを見る限り、既に二つの問題点が明確になりつつあるように思えます。このままでは、財務省主導&財政再建至上主義の予算編成となり、来年度の日本経済にかなりの悪影響を及ぼすのではないでしょうか。

政治主導の放棄?

 第一の問題点は、既に様々なメディアも報じている“政治主導での予算編成の放棄”です。

 菅首相は、予算編成プロセスが始まろうとする段階になって、政治主導の象徴であった国家戦略室の役割を、“経済財政政策の司令塔”から“首相の助言役”へと格下げすることを決めました。

 それに対して各メディアが“政治主導の放棄”と非難を始めたところ、菅首相は「内閣官房に新たな部署を設置し、そこで官房長官と政調会長が主導して予算編成を行なうので、政治主導は維持される」と反論しています。

 国家戦略室の格下げ自体、随分と無責任な話です。参院選マニフェストの中で、これまでの政権運営の成果の一つとして「国家戦略室の設置による政治主導の実現」と明記しているのに、その舌の根も乾かないうちに突然格下げしたからです。

 一説には、仙谷官房長官以下が、荒井国家戦略担当大臣には予算編成を任せられないと判断して、国家戦略室の格下げを菅首相に進言したらしいですが、そんな経緯はどうでもいい話です。それよりも問題なのは、この件に関するメディアや識者の批判の内容が間違っていることです。

 国家戦略室の格下げ自体は必ずしも政治主導の放棄を意味しません。どの組織が経済財政政策の司令塔の役割を担うにしても、そこが政治主導を実現するために必要な要件を満たしているかの方が重要なのです。