新国民党主席・洪秀柱に対して
習近平が送った祝電に込められた意図

先日、台湾国民党の新主席に選ばれた洪秀柱氏に対して、中国共産党の習近平総書記は祝電を打っている。こうした行動の背景に、筆者は中台関係をめぐる違和感を覚えた Photo:ロイター/アフロ

 3月26日、週末真っ只中の北京に身を委ねていると、あるニュースが飛び込んできた。

「洪秀柱当選国民党主席」

 今年1月、台湾で行われた総統・立法委員ダブル選挙で大敗した責任を取って、国民党主席の職を辞任した朱立倫の後任を決める選挙で、洪秀柱女史が新たな国民党主席に当選した(得票率:56.16%)。同主席の座を辞任した馬英九、朱立倫両氏が全うしなかった2017年8月までの任期を務めることになる。

 ほぼ同時に、もう1つのニュースが中国メディアウェブ版のヘッドラインを飾った。

「習近平電祝洪秀柱当選国民党主席」

 “中国共産党中央委員会”と記された公式な用紙に、台北の中国国民党中央員会、洪秀柱女士(筆者注:“女士”は中国語でMs.を指す)宛てに以下の祝電が送られた。名義は中国共産党中央委員会総書記・習近平。力強さと図太さを感じさせる繁体字の直筆サイン付きである。

「2008年以来、貴党・我党と両岸の双方は、力を合わせ、両岸関係の平和的、発展的、良好的な局面を切り開いてきた。両岸の同胞がそこから果実を得、私たちの仕事は広範な肯定を得た。昨今の両岸関係は新たな情勢に直面しているが、両党が民族の大義と同胞の福祉を念頭に置き、“九二コンセンサス”を堅持し、“台湾独立”に反対し、相互信頼の基礎と相互の交流を強化し、共に両岸関係の平和・発展と台湾海峡の安定という成果を守っていくこと、そして心を同じくし、中華民族の偉大なる復興を実現するために努力・奮闘することを切に願う次第である」

 習近平総書記からの祝電に対して、洪秀柱主席はすぐさま復電を送った。“中国国民党中央委員会”と記された公式な用紙に、中国共産党中央委員会総書記・習近平宛に以下の復電が送られた。名義は中国国民党主席・洪秀柱。太字でずっしりと書かれた習近平のそれとは異なり、洪秀柱の直筆サインは、シンプルだがどこか女性らしさを感じさせる細字であった。

「2008年、我党が再び執政して以来、“九二コンセンサス”の基礎の下、両岸関係の平和的発展を推進し、両岸・両委員会は多くの協定を結んだ。直行便と中国からの観光客の開放、およびECFA(両岸経済協力枠組会議)などである。この成果は決して容易に得られたものではなく、効果は皆が見ての通りである。

 この肝心な時期、我党は重大な挑戦に直面しているが、私は責任を持って党全員を率いて団結・努力し、新たな未来に向かって邁進していく所存である。