ここで、コンサルティング・ファームが、なぜ自力で問題解決できる人物を高く評価するのかを示す話を紹介したい。新刊『戦略コンサルティング・ファームの面接攻略法』の中から、その内部事情を紹介しよう(翻訳:渡部典子)。

 ここで、コンサルティング・ファームがなぜ、自力で問題解決できる人物を高く評価するのかを示す話を紹介したい。

 マッキンゼーに入社してから3カ月後に、まだ22歳だった私は、ニューヨークに本社を置き、オハイオ州クリーブランドに小さな事業部門を持つクライアントとのプロジェクトに携わっていた。私を含めたプロジェクト・チームのメンバーは、普段はニューヨークで仕事をしていたが、私以外のコンサルタントはみな結婚して子どももいた。チームの全員が「(独身者の)ビクターをクリーブランドに送り込もう!」と言った。

 こうして、私はそれからの18ヵ月間をクリーブランドで過ごすこととなった。週4日はクライアントの社内に席を置き、他のチームメンバーが側で指導してくれることもほとんどなかった。上司に当たるプロジェクト・マネジャーがクリーブランドに来るのはせいぜい週に1回、それもたった1日で、それ以外の時間は私は完全に1人きりの状態だった。しかも、プロジェクト・マネジャーが現地に来る主な目的は、クライアントとの関係構築や重要な会議に出席することだった。

 ここで、このプロジェクトがどのような内容だったのかを紹介しよう。

 クライアントはフォーチュン500(訳注:『フォーチュン』誌が毎年発表する全米の売上高上位500社。全世界の売上高上位500社はフォーチュン・グローバル500で発表される)に名を連ねる企業の一事業部門だった。この事業部門の売上高は2億ドルで(フォーチュン500の企業としては小規模である。マッキンゼーの上級コンサルタントは、売上高で5億~9億ドルの事業部門を担当することが多い)、3~5年後までに部門の売上高と利益を倍増させるための方法を考えるというのがプロジェクトの内容だった。

 私が告げられたのはこれがすべてであり、それ以外の情報は何もなかった。かいつまんで言うと、「ビクター、ここに飛行機のチケットと従業員のリストがある。これを持ってクライアントのところへ行き、売上高を倍増させる方法を考えてきてくれ。それでは、2、3ヵ月後にまた会おう」といった具合だ。

 戦略コンサルタントにとって、このようなことはいつでも起こりうる。付け加えて言うと、私は当時まだ3ヵ月間の勤務経験しかないコンサルタントにすぎず、持ち合わせているスキルは、採用面接を受けた時点のそれと大差なかった。これをケース・インタビューの状況になぞらえるならば、インタビュアーは志望者を評価するときに次のように考えるのだ。

 「私はこの人をフォーチュン500の企業のところへ、指導者なしに1人で送り込むことができるだろうか。この人はクライアントとうまく接しながら、クライアントの問題を解決し、会社の評価を高めてくれるだろうか」。これこそ、コンサルタントがインタビューをしながら考えていることであるが、ほとんどの志望者はこのような視点を理解していない。

 インタビューにおけるコンサルタントの公式の役割は、志望者を採用するか否かを決めることだが、彼らは同時に次のようなことを考えている。「私はこの人を自分のチームに引き入れたいだろうか。この人が自分のチームにいれば、私の仕事は楽になるだろうか」

 別の表現をすると、インタビュアーは次のように自問自答しているのである。「この人はすぐに自力で問題解決ができる人材になってくれるだろうか。それとも、私が何年間もつきっきりで面倒を見ることになるだろうか」

 話を元に戻すと、クリーブランドのプロジェクトでマネジャーを務めていた上司は、その後マッキンゼーでパートナーとなった。最初のうちは、彼は週に2日のペースで私のところへ来て、おそらくは私が大きな失敗をしたり、彼自身や会社の評判を落とすようなことをしていないかを確認していた。

 しかし、私が1人でもうまくやっていけるのがわかってからは、仕事の多くを私に任せるようになり、クリーブランドへの訪問もせいぜい週に1日となった。

 そのぶん、彼はクライアント経営陣との関係構築や、現在のプロジェクトに続く新しい仕事の売り込み、他の事業部門の担当役員との人脈づくりといった、パートナーレベルの活動に時間と労力を割けるようになった。

 彼がパートナーレベルの活動に注力できるかどうかは、私(そして他のチームメンバー)が自分の力だけで問題を解決できる能力を持っているか否かと直接的に関係する。これこそがまさに、マネジャークラスのコンサルタント(インタビュアーでもある)が自力で問題解決できる人材を求める理由である。彼ら自身の出世が、それに大きくかかっているのだ。