もしあなたが、トップクラスの戦略コンサルティング・ファームに就職したいと思ったならば、採用段階で非常に大きな難題が立ちはだかっていることに、すぐに気づくだろう。それは、「ケース・インタビュー」だ。
ケース・インタビューは、マッキンゼー、べイン、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、オリバー・ワイマン、A.T.カーニー、モニター・グループ(現モニター・デロイト)、ローランド・ベルガーといった戦略コンサルティング・ファームが採用している、独特の面接形式である。
戦略コンサルティング・ファームは、大学、ビジネススクール(MBA)、博士課程を卒業したばかりの学生から、実務経験が豊富なビジネスマンまで、幅広い層の就職志望者を評価するためにケース・インタビューを用いている。採用プロセスは志望者の学歴や職歴に応じて多少異なるが、採用段階におけるケース・インタビューの比重はすべての志望者にとってほぼ同じで、新刊『戦略コンサルティング・ファームの面接試験』で伝えるアドバイスは、あらゆる読者に役に立つだろう。本連載では、そのエッセンスを紹介していく(翻訳:渡部典子)。
私がケース・インタビューを
きわめるまでの道のり
最初に、ケース・インタビューに対する私の考え方がどのように形成されたのかを述べたい。
何年か前にトップクラスの戦略コンサルティング・ファームの面接を受けたとき、私は初めてケース・インタビューなるものを体験し、大失敗してしまった。本来は40分の予定が、なんと3分半で終了したのだ!
そのときの私の反応は、「いったい何が起こったんだ?」というもの。これほど拷問に近い面接方法を考え出した人間を、罵倒したい気持ちに駆られた。大学入試の数学で満点を取り、スタンフォード大学の卒業単位を3年間で取り終えた私にとって、わずか数分間で面接試験を落とされることは、予想だにしない出来事だった。
すぐに私は、ケース・インタビューでは大学の授業で学んだことが全然役に立たないことを悟った。ケース・インタビューで必要となるのはまったく新しいスキルであり、授業で教えられるどんな内容よりも、間違いなくずっと重要なものだ。
学校でよい点を取ることと、戦略コンサルタントとして働けるかどうかは、ほとんど関係がない。たとえ全科目で「A」評価を取っていても、ケース・インタビューをうまくこなせなければ、戦略コンサルティング・ファームではほぼ確実に不採用となるだろう。
戦略コンサルタントを志す者にとって、学生時代に習得すべき最も有益なスキルは、語学、数学、心理学、歴史、経済学、化学に関する知識ではないということを、私はすぐに理解した。最も役に立つのは忌々しい採用面接に受かるためのスキルであり、戦略コンサルティング業界では、採用面接といえばケース・インタビューを指すのだ。
幸いにも、最初のケース・インタビューは試しに受けたものだった。面接を受ける前に、私はスタンフォード大学のビジネススクールに在籍していた元戦略コンサルタントの学生を見つけて、1度だけ模擬面接をしてくれるように頼んだ。彼女は快く引き受けてくれたが、本番は前述のとおり大失敗に終わった。
屈辱的ともいえる最初の面接の後、ケース・インタビューに合格することが、私の最優先事項となった。戦略コンサルタントの職を得ることとは直接関係のない学業に、毎学期250時間も費やす合理的な理由などなかった。少なくとも同等かそれ以上の労力を、戦略コンサルタントとして採用されるためのスキルを習得することに充てる必要があった。
ケース・インタビュー対策のために私が学生時代に行ったことは、今から思えばとんでもなく時間がかかるやり方だった。本書のような参考書や、私の開設しているウェブサイト(www.caseinterview.com)が当時は存在していなかったからだ。