「社会的価値の追求」が利益に直結するという現象が起きはじめている。社会貢献とビジネスを直結させて考える、グローバルリーダーたちの「新しい常識」とは、いったい何なのか? 1000人以上の経営者へのインタビューを15年近く続けてきた藤沢久美氏の最新刊『最高のリーダーは何もしない』から、その具体例を見ていこう。
「きれいごと」が顧客に届くと、
社会が変わる
ビジョンは、共に働くメンバーたちの意欲を支え、意識を変えていくものですが、じつはメンバーだけではなく、お客様や取引先の意識や行動すらも変えていくことがあります。
衣料品・雑貨・美容関連商品・食品などの自社開発も手がける大手通信販売会社の株式会社フェリシモ(本社 神戸市)は、色柄・デザイン違いの商品が毎月届く「定期便」など、ユニークなサービスを提供していることで有名ですが、社会貢献に力を入れる企業としても知られています。
フェリシモは、「しあわせ社会学の確立と実践」という企業理念を持ち、事業性・社会性・独創性の3つが交わるところで事業をすることを目指してきました。上場した際にも「これまでとは違う、まったく新しい価値観の会社」と評されたほどです。
1つのエピソードをご紹介しましょう。
同社にはたくさんの主婦のお客様がおり、彼女たちからの声が数多く届きます。そこでフェリシモが気づいたのが、環境問題をはじめとした社会課題に対して、主婦の方たちがきわめて高い関心を持っているという事実でした。
「子どもたちが生きる未来をよりよくするため、自分たちにも何かできないだろうか」という母としての思いを強く持ちながらも、貢献のための手立てがなく、何もできずにいたという人がほとんどだったといいます。
そこではじめたのが、「インドの森の再生プロジェクト」への寄付金募集でした。
お客様から月々100円の寄付金を募り、インドの森の再生に取り組んだのです。1人のお客様が拠出するお金は月100円であっても、みんなのお金を集めれば数億円になります。
こうした取り組みが17年続き、再生された森に野生の象が戻ってくるという快挙を成し遂げました。