ビジネスと社会貢献
分けて考えるのは「時代遅れ」

「世界には、貧しい人々がたくさんいますが、現状のマーケットメカニズムでは、その人たちに便益を提供することができていません。いまこそ企業は『マーケットメカニズムを使って格差を縮小する活動』をしていくべきです」

ゲイツさんがグローバル企業のリーダーたちにこう呼びかけたその年に、世界はリーマンショックという大きな金融危機に直面しました。「自社の利益だけを求め続ける経営はうまくいかない」という風潮がますます加速し、企業も個人も社会の問題解決のために働くことを理想とする大きな流れが生まれたのです。

もはや世界では、「ビジネスの傍らで貢献活動もする」のではなく、「ビジネスそのものを通じて社会貢献する」のが、企業の理想的な姿だとされています。

グローバルに事業を展開する企業が、両者を別物だと考えていては「時代遅れ」と言われかねません。

ダボス会議に参加する企業のリーダーたちも、自社利益につながるアピールではなく、自社が世界の課題に対してどう貢献できるかを話すようになりました。ささやかな経験しか持っていない20代や30代の若手リーダーたちはもちろん、国家リーダーも社会貢献の視点を踏まえて語ります。

「自分たちの国をどう改革して、どう成長させていくか」という話が許されるのは途上国や新興国のリーダーまでであり、先進国のリーダーは必ず、「わが国はどのように世界に貢献できるか」を語ります。

世界のトップリーダーが集まるダボス会議での2000年代後半からの変化が、いま世界のあらゆるリーダーの「常識」となりつつあるのです。