「社会問題の解決」が
世界のリーダーの常識に
少し前まで、CSR(企業の社会的責任―Corporate Social Responsibility)が積極的に推進されるなかで、利益の一部を社会貢献に回すことが企業に求められるようになっていました。
日本企業にもCSR部門ができ、メセナと呼ばれた芸術などへの従来型の寄付行為から、温暖化対策としての植樹といった慈善行為にまで幅が広がっていったのです。
しかし、この流れのなかで進められた社会貢献は、「利益が出れば寄付をするが、利益が出なければ寄付額を削減する」ということになりがちで、持続可能性のあるものだとは言えませんでした。
そんな企業の動きと並行して登場してきたのが、社会起業家(Social Entrepreneur)という存在です。
この言葉が積極的に使われるようになったのはイギリスです。財政難に苦しむイギリスのトニー・ブレア首相が、官が行っていた社会福祉活動を民のノウハウを使って効率化する新しい取り組みを提言し、若者がトップを務めていたシンクタンク「DEMOS」などが中心となって研究が進められました。
その後、サブプライムローン問題が起き、ウォール街に不穏な空気が流れはじめた2007年あたりから、資本主義のあり方を問うリーダーが国内外で増えてきました。
リーマンショックが起こる直前の2008年1月のダボス会議では、フィランソロピスト(慈善家)としての活動をはじめていたビル・ゲイツさんが、「社会における会社の役割」というスピーチのなかで「クリエイティブ・キャピタリズム(創造的資本主義)」という新しい言葉を提唱し、大きな反響を呼びました。