現場への「権限委譲」と「単なる放置」は似て非なるものだ。ビジョンを実現させるためにも、リーダーは数字を冷静に見なければならない。1000人以上の経営者へのインタビューを15年近く続けてきた藤沢久美氏の最新刊『最高のリーダーは何もしない』から、その具体例をみていこう。

「利益」がなければ、
ビジョンは実現しない

現場に任せて見守るビジョン型のリーダーシップというと、売上や利益には無頓着でいいのだと誤解されることがありますが、それは違います。

ビジョン実現と売上・利益は不可分の関係にあります。

利益がなければ、給料を払い続けることはできませんし、どんなにすばらしいビジョンであっても、給料なしで働きたいという人はなかなかいません。やはりビジネスである以上、利益をしっかりと確保していくことが欠かせないのです。

たとえば、リサイクルショップを展開する買取王国では、各店舗の品ぞろえや価格設定を、店長や従業員に任せています。

リサイクルショップの仕入れは、お客様からの買取に基づいているため、本部で計画をつくって指示を出したところで、お店がある地域のお客様がどんなものを売りにきてくれるかは、予想がつきません。

そこで、お店の運営に関わる大半の権限は、各店舗の店長や、特定の分野に詳しい従業員たちに委ねられています。取り扱いたい商品を決めて買取広告を出すのも、買い取った商品を値づけするのも現場です。店頭の陳列やPOPの設置なども店舗ごとの判断で行います。