燃費不正に揺れる三菱自動車。日産との合弁でスタートした同社の軽自動車事業の課題を振り返る。写真は2013年5月20日、水島でのラインオフ式での三菱・益子社長と日産の志賀COO(いずれも当時) Photo by Toshiyuki Fukuda

またもやこんな事態に――。
蘇る「リコール隠し」の記憶

 こんな光景はもう見たくなかった――。筆者が記者会見で見た三菱自動車のトップの姿は、2000年時に同社のトップが苦悩の色を浮かべて深々と陳謝する姿と二重写しに見えた。当時、リコール隠し事件で社長の逮捕にまで至り、長い再建の道のりを経て真の再生に向かう矢先に再び発覚した三菱自動車の不祥事。それだけに、長く三菱自動車をウオッチしてきた筆者としても、残念な思いが強い。

 三菱自動車工業(以下「三菱自」)の相川哲郎社長は20日夕方、国土交通省で記者会見し、「軽自動車の燃費試験時に燃費をより良く見せるためにデータを改ざんする不正が行われていた」ことを認め、「お客様はじめ全てのステークホルダーの皆様に深くお詫び申し上げます」と陳謝した。

 三菱自が発表したのは、同社が製造する軽自動車の型式認証取得において、国交省へ提出した燃費試験データについて、不正な操作が行われていたことだ。該当するのは、同社が2013年6月から生産している軽自動車「eKワゴン」「eKスペース」と、日産自動車(以下「日産」)向けに供給している「デイズ」「デイズクルーズ」の4車種。三菱自はこれまでに「eKワゴン」「eKスペース」を15万7000台、「デイズ」「デイズクルーズ」を46万8000台販売しており、これらを合計した62万5000台(2016年3月末現在)で不正なデータ改ざんが行われたことになる。

 三菱自によると、「具体的にはタイヤの抵抗や空気抵抗の数値を意図的に操作し、実際より燃費が良くなるように見せかけ、届け出をしていた。軽自動車の開発で提携する日産が次期車の開発にあたり、該当車の燃費を参考に測定したところ、数値に開きがあったため三菱自に確認を求めた。これを受けた社内調査の結果、不正が発覚した」という経緯がある。

 今回の問題発覚の背景にあるポイントは、燃費不正の該当車が三菱自と日産の開発合弁提携によって2013年に市場投入された軽自動車であること、環境問題の高まりの中で軽自動車の燃費競争が熾烈になっていることなどだ。

 いずれにしても、今回の三菱自による軽自動車の燃費不正発覚は、2000年時、2004年時のリコール隠し事件をようやく乗り越えたかに見えてきた同社の経営に冷や水をかけるものとなった。その影響について相川社長も「我々としても手が付けられない状況。国内でどのくらい影響が出るか見通せない」としている。