3月24日に行われた発表会でMVNO事業への参入を発表したLINE。メッセンジャーアプリとして国内最大のシェアを誇る同社の参入は今後、MVNO普及の台風の目となる可能性が高い。だが一方では財務局による立ち入り報道など、LINEに対する風当たりは厳しさを増している。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 北濱信哉)

3月24日に発表された「LINEモバイル」は月額500円からで、「LINE」「Facebook」「Twitter」の使い放題が一番のセールスポイント
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「ついに“本丸”が動いた」――。あるキャリア幹部は警戒心をあらわに本音を漏らす。3月24日に開催された「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」で発表されたLINEのMVNO事業参入のことだ。国内のメッセンジャーアプリで圧倒的なシェアを誇り、海外でも順調に利用者を増やしているLINEの携帯事業進出に「キャリアの人間はみな、戦々恐々としている」(同幹部)。

 MVNOの正式名称は仮想移動体通信事業者。無線基地局を自社で持たずにキャリアから通信回線を借り入れることで、格安な利用料金で移動通信サービスを提供する。今回発表された「LINEモバイル」はNTTドコモの回線網を利用したMVNO。価格は月額500円からで、販売形態や料金体系など詳細は今夏のサービス開始までに順次発表される。

 LINEモバイルの大きな特徴は、LINEのチャット機能や通話機能に加え、FacebookやTwitterの主要機能で発生するデータ通信量がカウントされないこと。これまでMVNO事業者の多くは格安な利用料金を実現するために通信容量の上限を低く設定してきた。そのため通信量が上限を超えることも多く、SNSに慣れ親しんだ若者からは「パケ死した」「通信規制でサービスを利用できない」といった不満の声があがっていた。

 同社ではさらに、大量のデータ容量を消費する音楽ストリーミングサービス「LINE MUSIC」や、動画サービス「LINE LIVE」のデータ通信料をカウントしないプランの提供も視野に入れているという。

 これまでメディアの場では常々「MVNO事業はやらない」と公言してきたLINE。それがなぜ、今回の参入に至ったのか。あるLINE関係者はその理由をこう説明する。

「LINEはすでに高い認知度とシェアを持っており、ここからさらにシェアを拡大していくのは現実的ではない。LINEが成長を続けるには、まずスマートフォンの利用人口を増やし、LINEを利用できる環境へと移行を促すことが第一」

 LINE取締役CSMO・舛田淳氏はこのタイミングでMVNO参入を発表した理由について「日本ではこれまでスマートフォンの普及が遅れていたが、今年から来年はMVNOへマスが移行していく絶好の時期だと判断した」と語る。

 一方で、今回の携帯事業参入からは、メッセージサービスに依存した現状のビジネスモデルから脱却し、次の事業を育てようという同社の狙いも透けて見える。