安倍晋三首相の鶴の一声で始まった、携帯電話の通信料金の値下げ議論。2015年9月に行われた経済財政諮問会議で「家計における通信料金の負担が増加している」と指摘されたことで、総務省が携帯電話会社に対して、通信料金の値下げを要請しようとしているのだ。

 とはいえ、政府が民間企業の料金設定に介入するというのは、やや乱暴な感がある。そのため、総務省としてもあの手この手で安倍首相のメンツを保ちつつ、国民の支持を得ようと画策している。

 しかし、携帯電話会社も、料金値下げは営業収益に大打撃を与えかねないだけに、抵抗は必至だ。

国際的には高くない日本の通信料金

 携帯電話会社に対して、「日本は世界に比べて料金が高い」と指摘できれば、総務省としては話が早い。だが、総務省が調べたデータによれば、先進国で比較した場合、日本は平均レベルの通信料金に収まっている。

 このデータがあることで「日本の通信品質を考えれば、日本の料金は決して高くない」(ソフトバンクグループの孫正義社長)と、携帯電話会社が真っ向から反論しているのだ。

 さらに、通信料金に関しては、14年にNTTドコモが音声通話定額制やユーザーの利用状況に合わせた新料金プランを導入。他社も追随している。また、15年にもKDDIが音声通話定額制のライトプランを開始し、他の2社も後追いするなど、「ユーザーのために料金プランを常に考えてきている。総務省の議論は理解に苦しむ」(田中孝司・KDDI社長)という意見にもうなずけるほど、各社はそれなりに料金値下げの努力を続けてきた。

孫正義・ソフトバンクグループ社長も「日本の料金は高くない」と総務省の指摘に反発している。Photo:AFP=時事

 そこで、総務省が指摘したのが、キャッシュバックや端末の大幅値引きに関する問題点だ。

 店頭では、「実質0円」といった売り方がされており、端末代金を負担しなくても新製品が買えるような施策が展開されている。また、携帯電話会社を乗り換える人には「キャッシュバック」として数万円の現金や商品券が渡されることがある。

 そこで総務省は「頻繁に端末や携帯電話会社を乗り換える人だけが得をする。同じ端末を使い続ける人が支払っている通信料金が、それらの割引原資になっており不公平感がある」という指摘をし始めた。