「小麦粉を水で溶き、具を入れて鉄板で焼く。昭和の初めに子供の駄菓子から始まり、当初はお好み焼きもたこ焼きも区別はなかったが、徐々にさまざまな形態が生まれていった。戦後の食糧難の中、とにかくおなかを膨らませたい大人も食べるようになった」

 お好み焼きチェーン「大阪ぼてじゅう」を展開するぼてじゅうコーポレーション社長で上方お好み焼きたこ焼協同組合の理事長を務める宮原寿夫氏は語る。

 関西はお好み焼き、たこ焼きといった“粉もん”文化の中心だ。

「大阪には、中小のソースメーカーが多かった。それがお好み焼き文化の発展を支えた面もある」(宮原氏)

重ね焼きスタイルの広島風。広島県人に言わせると、これこそが「お好み焼き」で、あちらは「大阪風」

 しかし、人口当たりのお好み焼き店の数を見ると、大阪市をしのぐのが広島市だ。広島風のお好み焼きは、大阪風のように生地と具を混ぜ合わせるのではなく、薄くクレープ状に敷いた生地の上に、キャベツなどの野菜、豚肉、中華麺などを重ね、卵でサンドする重ね焼きスタイルだ。

 広島風が発展したのもやはり戦後。当初は生地の上にネギやレンコンなどのくず野菜を散らし、クレープのように巻いてソースを塗ったものだった。その後、まさにお客の“好み”に応え、店ごとに試行錯誤する中で現在のかたちとなった。

 原爆で焼け野原になった広島市内で、父や夫を亡くした女性たちが、女手一つで店を開いた例が多いのも特徴だ。そのため「○○ちゃん」という店名が今も目立つ。まさしく広島県民のソウルフードで、街のあちこちに小さなお好み焼き店が点在し、日常食として定着している。

 もっとも、家庭でも簡単にできる大阪風の混ぜ焼きに対して、広島風は多少の技術を要する。家庭で作るというより、外食がメーンとなる。人口比で店の数が多いのは、そうした背景もありそうだ。

 下表は、お好み焼き店のほか、店舗や施設について、人口比で“突出”した数のものを抱える都道府県や市区をランキングしたものだ。

 神道、仏教、キリスト教といった宗教施設数でも、見事にご当地色が出ているのが分かる。

 神社が多いのは新潟県佐渡市だが、そもそも都道府県別で見ても新潟県は神社数が最も多い。新潟県は明治期には全国最大の人口を誇った。元来、農業・漁業が盛んな土地柄のため、村落共同体の多さ、強さが神社の数につながったと考えられる。また、明治末期に政府は全国の神社の合祀政策を進めたが、その影響を比較的受けなかったという背景も持つ。

 一方、寺ではやはり京都市。キリスト教は、人口の少なさから1位は東京都千代田区だが、江戸時代に「隠れキリシタン」として信仰を守った長崎県の平戸市や五島列島、鹿児島県の奄美市などが挙がってくる。

「週刊ダイヤモンド」2016年3月26日号特集「ニッポンご当地ランキング」より。