モノの価値を左右する意外な存在、それは「金利」だ。
では、ファイナンスの世界では、金利はどのようにして決まるのだろうか?
発売から1週間半で早くも重版決定の新刊『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから、その考え方を紹介していこう。
金利は「あなた」が決めてください
前回見たとおり、金利とはリスクへの見返りである。リスクが高い投資ほど、金利が高くなる。裏を返せば、金利が高い取引というのは、リスクが高いとも言える。
一般に、お金が返せなくなる事態、すなわち債務不履行(デフォルト)の可能性を信用リスクと呼ぶ。キャッシュを手放すことで生まれる何よりも典型的なデメリットは、この信用リスクである。
ここから言えるのは、金利は本来、お金を出す側=投資家が決めるものだということだ。ある投資をするとき、投資家は「これくらいのリスクがあるということは、これくらいの利子をもらわないと割に合わない」と考える。こうして、その見返りを実現できるような金利が決まるわけだ。
「でも、私は投資家じゃないからなあ……」などと思っていてはいけない。あなたも銀行にお金を預けている以上、銀行にお金を投資しているはずだ。多くの人が「銀行が金利を決めている」と考えているが、ファイナンスの原則に従えば、銀行の預金金利についても、本来は各銀行の信用リスクを勘案して預金者が決めるべきなのである。
これだけの説明だと、「そんなこと言っても、我々が銀行に金利を変えさせることなんてできないですよ!」という人がほとんどだろう。金利を決めるのは借り手ではなく貸し手であるということについて、例を見ながら考えてみよう。