ファイナンス理論は「選択」の力を磨くうえで、大きなヒントを与えてくれる。では、「最も後悔が少ない選択」はどうすれば実現できるのだろうか?ファイナンス理論の入門書『あれか、これか』から「オプション理論」について紹介していく。

「後悔の量」を最小化する方法

まずはこんな問題から。

【問題】
あなたが親から相続した遺産は、時価1000万円のO社株のみである。この株価が今後どう動くかは誰にもわからないが、株価は必ず変動するので、あなたの財産はすでにリスクにさらされている。このとき、あなたならどの行動をとるか?
(1)相続直後にすべて市場で売却し、現金1000万円を手にする
(2)現時点で半分(500万円)だけ売却し、残りは保有し続ける
(3)売却はせずにすべて保有し続ける。

「リスク・金利・時間」の3つとモノの価値との関係性を解き明かす学問、ファイナンス――なぜ僕たちがこれを学んでいるのかといえば、そもそものスタート地点は「選択」だった。ファイナンスは価値をめぐる判断、つまり選択の力を磨くうえで、さまざまなヒントを与えてくれるのだ。

ところで、僕たちはなぜ正しい選択眼を持ちたいと願うのだろうか?答えはいろいろ考えられるが、1つの理由は後悔を避けたいからではないだろうか。「あのとき、どうしてあれを選んでしまったんだろう」と悔やんでしまう人、そんな思いをしたくない負けず嫌いな人のために、ファイナンス理論は存在しているのだとも言える。

さてそこで、親の遺産の相続である。これについては、どれが正解ということはない。株価が上がれば(3)がいちばん得をし、が(1)いちばん損をする。株価が下がればその逆、つまり(1)がいちばん得をし、(3)がいちばん損をする。

ただ、株式投資に自信がない人、現金至上主義にとらわれている人は、株価の予想などしようとせずに、確実に1000万円が手に入る(1)を選ぶはずだ。とにかく後悔するのが嫌で、絶対にリスクをとりたくないからこそ、利益確定に走るわけである。

しかし、本当に後悔したくないのだとすれば、そして、自分の予想にまったく自信がないのだとすれば、選ぶべきは(2)である。これを選んでおけば、株が上がろうと下がろうと、(1)や(3)に比べて最悪になることはない。必ず2番手を維持できる。

株価が下がったときには、「半分だけ売っておいてよかった」、株価が上昇したときには「半分残しておいてよかった」――そう考えられる。つまり、(2)の行動こそが「後悔の量」を最小化する選択肢なのである。このような振る舞いは、ファイナンスの「オプション理論」の世界に大いに通じるところがある。

そう、オプションとは後悔しないための取引なのだ。

そこで今回からは、数回にわたって、後悔したくない人のためのリスク・コントロール技術「オプション理論」について解説していくことにしよう。