絶対に負けない「後出しジャンケン」――ストック・オプション
「外国人経営者は破格の報酬を得ている」というイメージは多くの人に共通するところではないだろうか。日産のカルロス・ゴーン社長の高額報酬などは、毎年のように話題になる。2015年にはついに彼が10億円を超える報酬を手にしたとのニュースもあった。
しかし、世界に目を向けると、そんな話はほほえましく思える。ゴーン社長の報酬額は米CEO(最高経営責任者)のトップ100位にも入ってこないのだ。総じて、日本企業の役員報酬というのは、世界的に見るとかなり低い。
といっても、この数字には実は裏がある。欧米の経営者たちが受け取っている報酬のかなりの割合が、ストック・オプションによる報酬なのだ。ビジネス用語として、僕たちがいちばんよく耳にするオプションといえば、このストック・オプションだろう。これが具体的にどんなものなのかを知らない人もいると思うので、ストック・オプションの仕組みを見ながら、まずオプション取引のイメージをつかんでいただくことにしよう。
まずP社の株式が現在1万円/株で取引されているとしよう。このとき、P社の経営者であるあなたは、「今後5年間のあいだに1万円で1万株買う権利」をもらう。
重要なのは、株式そのものをもらうのではなく、株式を買う権利をもらうという点だ。ストック・オプション(Stockとは株式のこと)とはこの権利のことを指している。
5年後、あなたの経営手腕のおかげもあって会社の業績は順調に伸び、株価が10倍、つまり10万円になったとしよう。ここでストック・オプションの権利を行使すれば、P社の1万株を1株1万円で手に入れることができる。
そのとき必要な資金は1億円(=1万円×1万株)だが、市場では1株10万円で取引されているため、1億円で手に入れた1万株を市場で売却すれば、10億円が入ってくる。つまり、あなたは9億円(=10億円-1億円)の利益を手にすることができるのである。