最近発表されたあるコンサルティング会社の調査によると、企業の経営層が認識している社内の課題は「人材育成」がもっとも多く、前年トップだった「収益性向上」を上回って最大の関心事となった、という結果が出たそうです。景気悪化が底打ちし、企業経営者がようやく中長期的な視点を持つだけのゆとりができたということかもしれません。しかし、この調査結果には少し違和感があります。「人材育成」と「収益性向上」は無関係ではないはずだからです。

人材育成とは収益拡大のためにこそ
しなければならないもの

 国内企業の人事・人材育成部門の管理職を対象にしたこの調査によれば、企業の経営層が認識する課題は「人材育成」が79%でトップ。以下、「収益性向上」が70%、「顧客満足度の向上」が68%となったそうです。

前年は「収益性向上」が67%で最も多く、「人材育成」は66%、「顧客満足度の向上」が56%の順だったとのことで、調査を手掛けたNTTレゾナントでは、短期的課題から、中長期的課題である人材に再び関心が集まっている、と分析しています。

 経営者の気持ちに、少し先のことを考える余裕ができたという分析には、なるほどと思わせるものがあります。

 しかし、ちょっと引っかかるのは「人材育成」と「収益性向上」が別項目になっていることです。これはアンケートの選択肢を設定した調査会社への疑問ですが、そこには「人材育成」が「収益性向上」の一手段である、という認識が欠如しているように思われます。

 もちろん、会社は学校ではありません。人材育成は、企業目的のために実施されるべきものです。

 企業の現場管理職と話していると、「こっちにも収益目標が課せられているのに、なんで若手の面倒まで見なければならないんだ?」という不満がしばしば聞かれます。