でも、若手の成長が組織の収益にプラスになる、という視点をなぜ持てないのか、不思議な気がします。その視点に立てば、若手の成長支援は、とりもなおさず「収益拡大のためにやらなければならないこと」であるはずですし、人材育成は時々に濃淡が生じるのはやむを得ないこととはいえ、組織としては不断に実行しなければならないことであるはずです。

重要な人材は「経営・上級管理職」という
調査結果が意味するもの

 この連載では、この20余年の間に企業組織に起こったさまざまな変化が、職場における若手社員の育成を妨げるようになったことを繰り返し指摘してきました。

 経営をめぐる様々な変化の中でも、株式市場からの圧力の増大は、その大きなものの一つでしょう。20余年の間に企業のステークホルダーのうち株主と投資家の力が増大し、他方、従業員の地位が相対的に低下しました。

 四半期決算が経営のサイクルを目まぐるしくし、時間のかかる人材育成は経営者にとって「できればカネをかけずに済ませたいもの」になったように思います。前回は、即戦力人材への傾斜について指摘しましたが、NTTレゾナントの調査からも、その傾向が読み取れます。

「人材育成」がもっとも関心の高い課題になった、というのが調査結果ですが、さらに詳しく見ていくと、「内部的な経営課題の実現に向けて、今後3~5年において重要性がより高まると考えられる人材はどの階層ですか」という問いに対して、もっとも重要性が高まるとされたのが「経営・上級管理職」で、48.7%。次が営業・企画部門の管理職層で10.7%という結果です。

 一方では、若手はほとんど関心の対象になってないことが目を引きます。「専門職の若手層」が1.1%、「製造・技術部門の若手」が1.6%、「営業・企画部門の若手」が5.3%という結果です。